THK株式会社 いま財務経理部門に求められている役割とは?THKが推進する財務経理部門のデジタル変革
中根 建治氏 執行役員 経営戦略統括本部財務経理統括部 統括部長
大石 洋一氏 経営戦略統括本部 財務経理統括部 ASC課 課長
横山 直樹氏 経営戦略統括本部 財務経理統括部 経理課 兼 工場経理課 課長
藤原 幹尚氏 経営戦略統括本部 財務経理統括部 ASC課 副課長
全社の有用な情報が集まる財務経理部門
大手機械要素部品メーカーのTHKは、「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念の下、独創的な発想と独自の技術に基づく新しい機械構造や部品を提案し続けている。主力製品となっているのは、1972年からのロングセラーである「直線運動案内部品」(LMガイド)だ。それ以前は非常に困難とされてきた機械の直線運動部の「ころがり化」を独自の技術により実現し、産業の発展に貢献。その後もLMガイドは液晶製造ラインや鉄道車両、福祉車両、医療用機器、高層ビルや住宅、アミューズメント機器などへと用途を拡大していき、精密な“動き”を支える存在となっている。そして現在、THKが注力しているのが、「OMNI edge」および「Omni THK」という二つのサービスである。OMNI edgeは、部品状態の⾒える化により保全業務の効率化や在庫管理コストの削減、設備稼働率の向上を実現し、⽣産計画のスムーズな遂⾏をサポートする製造業向けIoTサービス。一方のOmni THKは、短納期品の在庫検索や迅速な見積もり依頼、設計図面の管理とAI画像分析、需要予測と生産計画、部品供給の最適化といったアプリケーションを提供するWebサービスだ。このように“モノ(製品)からコト(サービス)へ”のビジネスモデル転換を図り、その先に見据えるDXへと向かっているTHKだが、同時に注目したいのが財務経理部門の改革を目指した取り組みである。
かつて財務経理部門に求められたのは、「正確に記帳し、正確に処理する」という役割だった。しかしグローバル競争が激化し、高度なデジタル技術を武器に参入してくるディスラプター(創造的破壊者)と呼ばれる新興勢力も台頭するなど、ビジネスを取り巻く環境が激変する中で、財務経理部門の存在意義が改めて問われている。THK 執行役員 経営戦略統括本部財務経理統括部 統括部長の中根建治氏は、次のように話す。「単純なスコアキーパーやブックキーピングといった役割は、現在ではRPAなどに置き換えて自動化することが可能となっています。こうしたテクノロジーの進化も踏まえつつ、これからの財務経理部門が担っていくべきなのは、経営サイドに対するより迅速な情報提供です。もとより財務経理部門には、全社の有用な情報が集まってきます。そうした情報をどう活用していくのか――。会社が将来どういう方向に進むべきなのかという洞察を分析とともに示していく羅針盤のような存在になる必要があります」
決算の自動化と統制強化を見据えた変革へ
THKにおける財務経理改革の歴史は2009年にさかのぼる。リーマンショックを受けて骨太な企業体質に作り変えるべく、THKは間接部門を含めた構造改革に着手。その一環として立ち上げた「決算早期化プロジェクト」がそのきっかけだ。「当時の当社における決算対応は手作業に依存して属人化しており、長時間の残業が慢性化している状況にありました。決算に多大な工数をかけているということは、財務経理部門そのものが非常に高コスト体質になっていることにほかなりません。決算の阻害要因となっている手作業による業務を徹底して排除していくことにしました」と中根氏は振り返る。その後、財務経理改革の取り組みは、13年より「共通会計プロジェクト」へと発展。SAPを基盤とする会計システムの共通化、決算期をグローバルスタンダートである12月に統一する会計年度の共通化、IFRSに準拠した会計基準の共通化に取り組んできた。
こうして固めてきた地盤に基づいてTHKは、「会社が進むべき方向を示す羅針盤」となる財務経理部門を実現すべく、決算の自動化と統制強化を見据えた次のステップへの変革を19年よりスタートさせた。そしてこの新たな取り組みを支える基盤として活用し
て い る の が、ク ラ ウ ド 型 決 算 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム「BlackLine」だ。BlackLineは、世界130カ国・3400社超の企業に採用され、フォーチュン50企業の約3分の2が利用しているという決算プラットフォームのグローバルスタンダードだ。BlackLineを初めて知ったのは、16年12月に開催されたCFOフォーラム(日本CFO協会主催)においてプレゼンテーションを聴講したのがきっかけです。まだブラックラインの日本法人が開設されていなかった頃です。紙やExcelベースの時代遅れのプロセスから脱却し、月次/四半期/年次決算処理の品質、正確性、効率性を高めるというメッセージは、決算早期化プロジェクトや共通会計プロジェクトを進めてきた私たちの考え方と完全に合致していました。また、SAPとも非常に親和性が高い連携運用が可能と聞き、19年8月に導入に至りました」と中根氏は語る。
スモールスタートできて、 徐々にプロセスを拡大できる「BlackLine」
ブラックラインの日本法人による活用促進の提案もあり、20年の半ばごろ、THKにおけるBlackLineの活用は大きく前進する。現在利用しているBlackLineのモジュールは、決算に関わる全てのタスクを網羅してダッシュボードやレポートに可視化する「タスク管理」、勘定科目別残高と補助簿、明細内訳などを比較して差異を自動的に抽出して迅速かつ正確なデジタル決算を実現する「勘定照合」、入金消込やグループ会社間取引などにおけるさまざまな突合作業を自動化する「マッチング」の三つだ。THK 経営戦略統括本部 財務経理統括部 ASC課 課長の大石洋一氏は、「まずはExcelで管理されている既存の決算プロセスをBlackLineに取り込むことからスモールスタートしました。その後、徐々にプロセスを拡大するとともに、電子承認の適用範囲を広げたり、証憑・証跡も添付できるようにしたりといった拡張を図ってきました」と語る。そうした中で各モジュールは、具体的にどのような活用が行われているのか。
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※本記事は2021年4月14日公開のダイヤモンドオンライン社の取材記事に基づく。
<資料の主な内容>
・全社の有用な情報が集まる財務経理部門
・決算の自動化と統制強化を見据えた変革へ
・スモールスタートできて、徐々にプロセスを拡大できる「BlackLine」
・「BlackLine」を核として財務経理統括部のCoE化を推進
・クラウド型決算プラットフォーム「BlackLine」とは
企業情報
業界 | 製造業 |
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地域 | 国内 |
導入時期 | 2019年 |
ユーザー数 | Enterprise |
導入ソリューション | タスク管理、勘定照合、マッチング |