日経産業新聞 コラム(ビジネス)に掲載されました
日本の経理現場の無駄なくせ 米企業が自動化に挑む
経理業務を自動化するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を提供する米ブラックラインが日本で事業を拡大している。今年1月に参入し、すでにメルカリなど複数の有力企業が導入を決めた。経理作業の自動化は多くの企業が提供しているが、テリース・タッカー最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞社の取材で「経理作業の効率化の余地はまだある」と強調した。
■150カ国以上でサービス提供
2001年に米国で創業したブラックラインは財務管理の自動化SaaSを150カ国以上の2800社を超える企業に提供している。19年1月に日本法人が事業を始めてからは、想定を上回るペースで受注が進んでおり、21年には国内で100社の導入を目指す。
ブラックラインのサービスはリアルタイムで会社の決算情報を参照できるサービス。他の経理サービスなどから逐一データを取り込み、勘定照合や会社間伝票の整合性のチェックなどといった決算に係る業務を自動化できる。期末や期初に集中しがちな月次処理や年次処理を日常業務に組み込むことが可能になる。
タッカーCEOは「伝票の入力などはデジタル化が進みつつあるが、月次の締め処理や監査の領域では手作業が残っている。効率化の余地はまだある」と指摘した。同社のサービスで、負荷の分散や処理精度の向上などを期待できるという。
ソフト開発大手の米サンガード系列の企業で最高技術責任者(CTO)を務めていたタッカーCEOは01年に米ロサンゼルスでブラックラインを創業した。
タッカー氏は起業のきっかけについて「銀行の資産管理ソリューションを提供する業務をこなすなかで、経理担当者が会計簿管理の手動プロセスに不満を持っていることを知り、事業を思いついた」と振り返る。
まだ「クラウド」という言葉が定着する前だった08年にソフトウエアのパッケージ販売から、クラウドを活用したSaaSビジネスに転じた。
16年には女性技術者が創業したスタートアップとして初めて米ナスダック市場への新規株式公開(IPO)を果たした。現在では米ボーイングや英ブリティッシュガス、豪カンタス航空など世界の巨大企業がブラックラインのサービスを活用しているという。
タッカーCEOは「数万、数十万の口座を持っている状態で、表計算ソフトで勘定を管理するのは現実的ではない」と指摘する。特に日本企業の経理部は、1つの処理を終えてから次の業務に取りかかる「直列処理」の文化が根強い。ブラックラインで自動化が進めば、経理担当者の働き方改革にもつながりそうだ。
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