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財務・会計用語集

コーポレートガバナンス


コーポレートガバナンスとは何か?

コーポレートガバナンスとは、企業が健全かつ適切な経営を行うように監視・統制する仕組みのことで「企業統治」と訳される場合もあります。

企業経営においてCEOなどの経営責任者は、単に利益を追求するだけでなく、株主をはじめ、顧客・従業員・金融機関・取引先といったステークホルダーの利害を考慮する必要がありますが、近年、企業のさまざまな不正や不祥事が取り沙汰される中で、コーポレートガバナンスの重要性が広く認知されるようになりました。また、外国人投資家の持ち株比率の高まりなど、企業の資金調達におけるグローバル化が進み、株主の影響力が高まり、経営に関してより公正で透明性のある説明が求められるようになったことも、コーポレートガバンスが重視される要因となっています。

コーポレートガバナンスの具体的な内容

日本では大手企業を中心に監査役が経営を監視する役割を担っていましたが、1990年代に企業の不祥事や経営悪化が続発したことにより、米国型の経営者を監視するコーポレートガバナンスという考え方が注目され、従来の監査役に加え、新たに「委員会設置会社」という米国型の統治形態が一部企業で導入されています。

また、コーポレートガバナンスの実践に関し、金融庁と東京証券取引所(東証)がコーポレートガバナンスに関する企業指針(コーポレートガバナンス・コード)の中で策定し、5つの基本原則を定めています。
以下に5つの基本原則のそれぞれのポイントについて紹介します。

1. 株主の権利・平等性の確保

  • 株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うこと。
  • 株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うこと。
  • 少数株主や外国人株主については、平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うこと。


2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

  • 従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーとの適切な協働に努めること。
  • これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けて、取締役会・経営陣はリーダーシップを発揮すること。


3. 適切な情報開示と透明性の確保

  • 会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うことに加えて、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むこと。
  • 提供される情報は、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものであること。


4. 取締役会等の責務

取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、次のような役割・責務を適切に果たすこと。

  • 企業戦略等の大きな方向性を示す
  • 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行う
  • 独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行う


5. 株主の対話

  • 株主総会に限らず、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うこと
  • 株主との対話においては、株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明すること


コーポレートガバナンスと内部統制の違い

コーポレートガバナンスは株主の権利保護と不祥事防止のための経営監視の仕組みであるのに対し、内部統制は法令遵守のための社内向けの仕組みと言えます。

企業会計審議会では、次に挙げる四つの目的を達成するために、企業内の全ての従業員が遂行するべきプロセスと定義しています。

  • 業務の有効性や効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関連する法令などの遵守
  • 資産の保全


コーポレートガバナンスと内部統制は目的や対象が異なりますが、コーポレートガバナンスにおける「透明性のある適切な情報開示」と、内部統制における「財務報告の信頼性」という点では共通している部分があり、コーポレートガバナンスの有効性を維持する上で、内部統制による透明性のある企業活動が必要不可欠といえます。

コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの違い

コーポレートガバナンス・コードは企業の経営者に対する行動規範なのに対し、スチュワードシップ・コードは外部の機関投資家(証券会社・ファンドなどの大口投資家)に対する行動規範として定められたものです。

スチュワードシップ・コードは、金融機関による投資先企業の監視といったコーポレートガバナンス向上の取り組みが不十分だったことがリーマン・ショックの要因の1つであったという反省から、2010年に英国で機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンスとして定めらました。日本では2014年2月に金融庁が中心となって策定されました。

日本版スチュワードシップ・コードでは以下の7つの原則が定められています。

  1. スチュワードシップ責任(※)を果たすための明確な方針を策定し、公表する。
  2. スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、公表する。
  3. 投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握する。
  4. 投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努める。
  5. 議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫する。
  6. 議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行う。
  7. 投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備える。


※スチュワードシップ責任:
機関投資家が、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的なリターンの拡大を図る責任のこと。
  

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