TCFD
TCFDとは何か
TCFDとはTask Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略語で、G20*の要請を受け、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために、2015年に金融安定理事会(FSB**)によって設立された国際的な組織のことです。
*Gup of Twenty。G7に参加する7か国、EUおよび新興国12か国の計20の国々と地域から成る国際会議
**各国の金融関連省庁及び中央銀行からなり、国際金融に関する監督業務を行う機関
TCFD開示の内容
TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する下記の項目について開示することを推奨しており、東証は、2022年4月以降、プライム市場に上場する企業に対してTCFDに基づく情報開示が義務付けています。
1)ガバナンス:気候関連リスクと機会に関する組織のガバナンス
- 気候関連リスクと機会に対する取締役会の監督体制
- リスクと機会を評価、管理する上での経営層の役割
2)戦略:リスクと機会が事業、経営戦略、財務状況に与える影響
- 短期・中期・長期の気候関連リスクと機会
- リスクと機会が事業や経営戦略、財務状況に与える影響
- 2℃目標等の様々な気候シナリオを考慮した戦略
3)リスク管理:気候関連リスクの識別と評価及び管理について
- リスクの識別と評価のプロセス
- リスク管理のプロセス
- 企業全体のリスク管理への統合状況
4)指標と目標:気候関連リスクと機会の評価に用いる指標と目標
- 気候関連リスクと機会に対する経営戦略やリスク管理に用いる指標
- 温室効果ガスの排出量(Scope1、2、3)*
- リスクと機会を管理する上での目標と進捗状況
*
Scope1:自社での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出の温室効果ガスの排出量。
Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気などのエネルギーを使用した事によって排出される温室効果ガスの排出量。
Scope3:サプライチェーン排出量(企業と企業活動において関わるあらゆるところから排出される温室効果ガスの総量)のうち、Scope1とScope2以外の間接排出量で、他社から購入した製品が製造時に排出した温室効果ガスや、自社の製品を消費者が使用したときに排出される温室効果ガスなどが該当。
TCFD開示はなぜ重要か
従来の財務情報に加え、環境・社会・ガバナンスの観点も含め投資を決めるESG投資が注目されていることからも分かるように、企業の気候変動に関する対応は、投資家が投資を決定する上で重要な判断材料になっており、投資にESGの視点を取り入れることに賛同する機関は、日本を含め世界で増加しています。このような状況下において、企業に投資家が適切な投資判断時に必要となる気候関連財務情報開示を促すTCFDが重要視されています。
TCFD開示は企業にとっても以下のようなメリットがあります。
- リスク管理の強化
TCFDでは2℃目標などのシナリオを用いて、気候関連のリスクと機会を評価し、経営戦略やリスク管理に反映させ、情報を開示することを求めており、どんな情報を開示するか、企業は自社のリスクマネジメントなどについて慎重に検討する必要があります。このように、TCFD開示は企業に気候変動に対するリスク管理を検討する機会の提供と、リスク管理の強化(実践)につながります。 - 投資家や顧客へのアピール
ESGやSDGsが注目される中、企業が気候変動への対応とリスクを公表することは、投資家だけでなく、顧客や取引先に対してもアピールすることができます。
TCFD開示の各国の状況
TCFDでは、気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていくという趣旨に賛同する機関等を公表しており、2023年4月末で世界全体では金融機関をはじめとする4,458の企業・機関が賛同を示し、日本では1,306の企業・機関が賛同の意を示しており、TCFD開示において日本企業は世界をリードしています。
※日本における賛同企業および機関の一覧(出典:経産省ウェブサイト)