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【前編】経理部門における優秀な人材の確保・育成~調査データとBlackLine導入企業の事例から~

優秀な人材の確保と育成は、昔も今も企業にとって重要な経営課題のひとつです。経理部門においても同様ですが、近年、優先度の高いテーマとなっています。

この度、この「経理部門における優秀な人材の確保・育成」をテーマとして、2本立てのブログで考察して参ります。前編である本ブログではまず、経理部門で優秀な人材の確保・育成が喫緊の課題となっている背景から、その課題解決に必要な要素を紐解きます。

アジェンダ

背景~なぜ今、優秀な経理人材が求められるのか

経理部門において「優秀な人材の確保と育成」が喫緊の課題となっている理由として、大きく3つ考えられます。まずは、『経理部門に対する期待の高まり』『経理人材の流動化』の2つがあります。それらに加え、『企業におけるAIの浸透』も、今後、「優秀な人材の確保と育成」に大きく関わってくることが予想されます。

第1の理由:経理部門に対する期待の高まり

経理部門には経営の意思決定をサポートするという重要な役割がありますが、近年の事業環境の先行き不透明感によって、この意思決定支援の役割に対する期待が大きく変化しています。

1. より早く、よりリアルに
予想もされなかったような変化が起こる世界では、計画されたことを確実に実行するだけでは不十分で、環境の変化に迅速に対応する機敏性(アジリティ)が要求されます。経営者は市場のニーズや変化をいち早くとらえ、迅速に意思決定を行うことが必要であり、経理部門には、より早く、よりリアルな経営情報を経営層に届けることが求められています。

2. 情報提供者からビジネスパートナーへ
経理部門の役割は変わりつつあります。会社の経営数値や財務状況から問題点を特定する“情報提供者”の役割を越えて、事業ポートフォリオや投資判断などの中長期的な経営戦略の立案・実行に対して能動的に発信し、経営の意思決定に参画する、いわゆる“ビジネスパートナー”の役割が期待されるようになっています。日本企業においてFP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリスト)というポジションを設ける企業が増えつつあるのは、この変化を反映した動きと言えます。

この2つの経理機能の高度化に対応するために、後者においてはアカウンティングの専門知識に加えて、ファイナンスの知識と自社のビジネスや資本市場に対する理解と洞察力を備えた、経理機能の高度化をリードするような人材が求められています。
また、前者においてはデータの標準化やリアルタイムでの情報共有など、テクノロジーに依存する部分がありつつも、それ以上に必要なデータの選別や“重要な変化”をとらえる嗅覚、リアルなデータをタイムリーに把握するためのプロセスの最適化など、ビジネスとテクノロジーの両面でのナレッジや、現場とのコミュニケーション力が求められます。

第2の理由:経理人材の流動化

終身雇用のスタイルが若手世代を中心に崩れつつあることは、経理部門においても以前から見られましたが、今では現場で最も戦力を発揮する中堅クラスにおいても流動化が始まっています。日本CFO協会が行った調査でもその傾向は顕著に表れており、2023年の調査結果では経理人材の流動性が高まっていると回答した割合が約66%、若手だけでなく中間層でも高まっていると回答した割合が約40%と、ともに高い割合を示しています。

この経理人材の流動化が経理の現場に与える影響は深刻です。リーマンショック以降、多くの企業で経理部門をスリム化し、職人化と属人化が進んでいます。人材の流出は組織のスキルやナレッジの継承が困難になるだけでなく、現場の負荷の増大につながります。そしてそれにより従業員のエンゲージメント低下を招き、経理機能も低下し、最悪の場合誤謬や不正リスクを高める恐れすらあります。

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出典:日本CFO協会 サーベイ「経理部門のDX推進に向けた実態と課題2022, 2023」

新しい第3の理由:AIの浸透

デロイト トーマツ グループが、プライム市場上場に上場する企業を対象に実施した生成AIに関する調査(※)の中に、経理に携わる方にとって少しショッキングな結果が出ているので抜粋いたします。

  • 全体の約9割の回答者が生成AIを導入済みと回答
  • 3割を超える回答者が生成AIの導入によって人員の配置転換を行ったと回答
  • 配置転換を行ったと回答した中で、30.1%が経理財務部門の人員を削減したと回答
    (30.1%は、営業やIT、人事総務など他部門と比べて最も高い数値)

この数値だけを見ると、今後、AIを本格的に導入する企業が増えるにつれて、経理部門に対する人員削減のプレッシャーが強くなることが危惧されます。一方で、AIの活用領域が広がり、AIを使いこなす経理人材のニーズも高くなるに違いありません。

※デロイト トーマツ グループ「生成AI活用に関する意識調査」
  調査対象:プライム市場所属売上1,000億円以上の企業の部長クラス以上1,200名
  調査期間:2024年2月~3月(有効回答数 1,180名)

優秀な経理人材の確保と育成に必要な要素

では、どうすれば優秀な経理人材を確保することができるのか、優秀な経理人材を育てることができるのでしょうか。

人材確保に必要な要素ー柔軟な働き方・学習機会・成長機会・DXの推進

人材を確保するために必要な要素として「働きやすさ」と「働きがい」があります。働きやすさとは、給与や勤務地、福利厚生のような就労条件や就業環境のことを指し、働きがいとは、仕事の内容ややりがい、キャリアに関することで、どちらも重要な要素です。

一般的に「働きやすさ」が会社や組織に対するエンゲージメントを高める要素で、人材の定着化に有効なポイントであるのに対し、「働きがい」は、仕事に対するエンゲージメントを高める要素で、外部人材の獲得においては特に重要なポイントと考えられています。

これに関連し、日本CFO協会が2023年に実施した調査の中で「経理財務として働く組織を選ぶ上で何を重視するか」について、「条件・環境」と「スキルアップ・キャリアアップ」のそれぞれについて質問しています(下グラフ参照)。

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まず、「条件・環境」については「給与水準」が最上位の回答となっています。次いで、「リモートワークやフレックスタイム等、働き方が柔軟」という回答が「企業文化、社風」と並んで44%という2番目に高い割合となっています。
コロナ禍が落ち着きを見せる中、従来の出社スタイルに回帰する企業も増えつつありますが、「人材の定着・獲得」という観点ではリモートか出社か?の二者択一ではなく、ハイブリッドの勤務形態を取り入れるなど、柔軟な対応が“働く側”から求められていることがわかります。

また、これまで配偶者の転勤や実家の家族の介護などの事情により、スキルも意欲もある人材が離職を余儀なくされるケースがあった中で、リモートワークの恒常化は、そうした人々の再雇用にもつながります。
それは企業にとっても大きなメリットがあると考えられます。

続いて「スキルアップ・キャリアアップ」についての調査結果では、経理人材の多くが「個人のスキルを伸ばすための学習の機会」を重視し、次いで「経理財務のスペシャリストとしての経験やスキルを活かす成長機会」を求めていることがわかります。また、「デジタル活用に積極的で、先進的な仕事の進め方を志向している」も34%と高い値となっており、DXの推進は経理人材の獲得においても有効であることがうかがえます。

人材の育成に大切な要素ー学習機会・成長機会・モチベーション・DXの推進

この点について、人事戦略コンサルティング会社の代表・南和気氏(※)は人材価値を構成する要素として「スキル」「経験」「モチベーション」の3つをあげ、モチベーションが上がればスキル獲得のスピードが向上し、そのモチベーションを上げるのが成功体験(経験)であり、人材価値を効果的に高めるために、①成功体験→②モチベーションアップ→③スキル向上→④さらなる成功、のサイクルを廻すことだと指摘しています。

人材を確保する上で「学習機会」と「成長機会」が重要であることはすでに述べた通りですが、スキルを高める上で学習機会は欠かせませんし、経験とは成長機会と同意と捉えることができます。また、「DXの推進」は人材獲得に有効であるだけでなく、DX関連のスキルやナレッジを習得するという点で、DX人材の育成という面でも有用と言えます。

※BTB Tokyo2023イベントレポート「人的資本経営を実現するための人材投資術」

後編では、こういった要素についてBlackLineがどう貢献できるのか、実際に課題解決に取り組まれているお客様の事例も交えながら、解説して参ります。

<ライター>

yakata.jpgブラックライン株式会社
ファイナンシャルエキスパート
屋形 俊哉

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