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財務・会計用語集

関係会社間取引の経理

関係会社間取引とは?

関係会社間取引とは、親会社と子会社、子会社どうし、親会社と孫会社など、グループ会社の間で行われる取引のことです。会社間取引やグループ間取引と称される場合もあります。外販目的の物品の取引、物流サービスやシェアードサービスのような業務委託、生産用設備などの固定資産の譲渡などの物品やサービスの売買の他、子会社から親会社への技術使用料や配当金の支払い、関係会社間での投融資のようなお金のやり取りなど、その内容は多岐にわたります。

関係会社間取引の経理

関係会社間で発生した取引は、関係会社間以外の通常の取引と同様、それぞれの会社の会計帳簿に記録され、各社ごとに決算書が作成されます。ただし、連結決算で各社の決算書を単純に合算すると決算の水増しになるため、相殺消去すべき取引を洗い出して、合算値から控除する必要があります。

例えば子会社が生産した商品を親会社が販売している場合、親会社で顧客に対する商品の売上が計上されますが、子会社側も親会社に対する商品の売上が計上されているため、連結決算の際に子会社から親会社に対する売上と、親会社の子会社からの仕入を相殺する必要があります。また、子会社が親会社に商品を販売した際の売掛金と、親会社が子会社から仕入れた際の買掛金も期末に残高が残っている場合は相殺する必要があります。そのため、売上や仕入、債権債務など、連結決算の際に相殺消去の対象となる可能性が高い勘定科目は、グループ内とグループ外に分けて(例.グループ外売上、グループ内売上)、取引を記録する段階で区分するケースが一般的です。

関係会社間取引の特徴

関係会社間取引の特徴として、膨大なデータ量、関係会社間取引の照合業務による負荷増大、移転価格税制適用のリスクの3つがあげられます。

<膨大なデータ量>
あるメーカーで「顧客に自社製品を販売した」という取引を例にします。企業規模によって異なりますが、ほとんどの大手製造業の企業は国内外に複数の生産子会社や販売子会社、物流などの周辺サービスを請負う会社を持っており、グループ外への商品の販売という1件の取引に対して何倍もの取引データがグループ内で発生します。

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この図ではUS販社から顧客への販売データに対して、以下の5件の取引データが発生しています。

 ・生産子会社で半製品を製造するための親会社から子会社へのキーパーツの支給
 ・半製品製造の子会社から最終組立を行う子会社への出荷
 ・部品製造の子会社から最終組立を行う子会社への出荷
 ・最終組立を行う子会社から親会社への出荷
 ・親会社からUSの販売子会社への輸出

また、図の矢印はモノの取引だけを表していますが、物流会社がグループ会社の場合には物流子会社との間で会社間取引が発生しますし、製品開発を親会社が行っている場合は生産子会社から親会社への技術使用料の支払が発生する場合もあります。ある統計ではグローバルにサプライチェーンを展開するグループ企業の場合、グループ内で発生する取引量の80%が関係会社間で発生しているという数値もあり、単にデータを処理するだけでも多くのリソース(作業工数やシステムの負荷など)が費やされます。

<関係会社間取引の照合による負荷増大>
連結決算において関係会社間取引を相殺消去するために、会社間取引の照合を行います。しかし、各社の伝票処理のタイミングのズレ、処理漏れ、価格の誤りなどにより、多くの企業において会社間取引データの不整合が、数多く発生しています。人為的なミスによる不整合もありますが、取引データを処理する各社のシステムがバラバラである場合には、システム間のデータ連携の不備や処理タイミングのズレなどもあります。また、輸出入のように輸送期間が長い場合は、輸送期間中の商品の帰属ルールや各社での計上タイミングなどをグループ会社間で決めておかないと、不整合の要因となります。ほとんどのグループ企業の親会社の経理部門が、関係会社間取引の照合業務に多大な工数をかけており、担当者の長時間残業をまねき、決算早期化の妨げにもなっています。

<移転価格税制適用のリスク>
関係会社間取引が国をまたがる場合の取引価格のことを移転価格と言います。関係会社間の取引価格を比較的柔軟に決定できるため、利益操作に使われる(あるいはそう見なされる)リスクがあります。連結納税が適用される関係会社間の取引であれば、損益を通算して納税するので大きな問題とはなりませんが、そうでない場合、安易な価格決定は税務当局から指摘される可能性があります。

例えば、海外子会社で製品を製造し、親会社が輸入して販売する場合に、連結決算すれば同じと利益を上乗せしない価格で取引すると、海外子会社がある国の税務当局から見れば、本来、その子会社で計上されるべき利益が親会社に移転され、その分、海外子会社から納入される法人税の金額が少なくなり、看過できない事態と言えます。また、国による法人税率の違いを利用して、税率の高い国の関係会社では利益率を低く抑え、税率の低い国の関係会社で利益率が高くなるように取引価格を意図的に操作するような事例もあり、各国がこれに対処するために移転価格税制を整備し、運用しています。

FAQ(よくある質問)

関係会社間取引には、前述の図にあるような部品や製品の取引以外にどんな取引がありますか。

親会社が子会社へ運手資金を融資するような、関係会社間でのお金の貸し借りも会社間取引に該当します。この時に注意しなければいけないのは利息です。子会社だからとって、親会社が無利息で融資している場合には、親会社が当然もらうべき対価(利息)をもらっていないため、その利益を子会社に寄附したとみなされて「寄附金の損金不算入」の適用を受ける可能性があります。

関係会社間で共通の経費が発生する場合も注意が必要です。複数の関係会社が同じフロアを使用することはよくあります。生産工場においても、同じ工場内のある一角が別の関係会社というケースもよくあります。
そうしたケースでの水道光熱費やフロア賃借料、備品にかかる経費などが共通して発生しますので、按分計算して各社が負担する必要があります。

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