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最新サーベイから考察「企業成長とガバナンスを支える経理のDX推進と人材」

「BeyondTheBlack TOKYO 2022」レポート#4
シリーズ4回目は、一般社団法人日本CFO協会専務理事 事務局長 谷口 宏氏による講演です。

言うまでもなく、多くの企業にとって事業拡大は至上命題です。しかし、事業や拠点の拡大によって管理が追いつかず、往々にしてガバナンスが効かなくなるという状況がしばしば発生しており、事実、事業拡大にともなって会計不正が起きやすくなるという調査結果も存在します。事業拡大とガバナンスの強化を両立するためには、会計不正が起きない仕組みや、その仕組みを作る経理人材が必要です。この困難な両立を実現する方法について、一般社団法人日本CFO協会専務理事 事務局長の谷口 宏氏と、ブラックライン株式会社 代表取締役社長の宮﨑 盛光が対談いたしました。なお、ブラックラインでは2022年5~6月にCFO協会と共同で財務・経理幹部向けのアンケートを実施しており、500社以上から回答が集まったこのアンケート結果を参照する形で、今回の対談は進められました。

※本アンケートに基づく結果・考察はこちら:
https://www.blackline.jp/resources/CFOForum-145issue.html

CFOasso_BTB.png右:一般社団法人日本CFO協会専務理事 事務局長 谷口 宏氏

【アジェンダ】

不適切会計が減らない理由とは

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まず、前述したアンケートの「会計カバナンスは機能していますか?」という質問に対し、本社の財務・経理幹部の30%が「十分とはいえない」「不安がある」と回答していることが紹介された。このように懸念する理由について質問したところ、「手作業による抜け漏れのリスク(66%)」「リソース不足(54%)」などが回答されたという。

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また、同様に国内/海外グループ会社に対して「会計カバナンスは機能していますか?」と質問したところ、やはり34%が懸念するという旨を回答している。こちらの理由についても質問したところ、「状況を把握する仕組みが無い(49%)」「スキル不足(46%)」という回答が寄せられた。

これらのアンケート結果に対し、谷口氏は「会計業務に携わる人間の対応に差があることが問題である」と指摘する。谷口氏によると、本社と海外拠点で経理の規定やポリシー、会計の知識にばらつきが出るというケースがしばしば発生するという。「人間が会計業務を担当する限り不正はなくならない、と言われます。システムが業務を担当し、人間はそれを制御する、といった考え方の転換が求められる」と語り、管理レベルを下げてでも均一に情報を扱えるような体制づくりが重要であると説明していた。

また、谷口氏は、本社がグループ会社から月次・四半期の際にデータをもらってまとめるという一般的な手法についても疑問を呈し、「本社が自らデータを取りに行ける体制というのがガバナンス強化の前提になります」と本社による主体的なチェックの重要性を語った。

経理財務部門の業務は生産性が低い?

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次に、「自社の経理財務部門は生産性高く業務できていると思いますか?」という質問に対し、64%が生産性の低さを実感する旨を回答していることが紹介された。この回答に対し、谷口氏は「本来ならば、システムからデータを持ってくるだけで完結するはずの業務だが、修正して都度手を加えなくてはいけない虚しさが、この回答に結びついているのではないか」と分析。また、「経理財務部門のアウトプットが企業にとってどのように使われているのか、を実感できる形で把握していないことも原因である」と語り、経営者のための報告書やレポートをまとめる業務について悩む方が多いのだろうと見解を示した。

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一方、前述の質問に対し肯定的な回答をした人に対して「なぜ生産性高く業務ができていると思いますか?」という質問を投げかけたところ、56%が「改善活動に継続して取り組んでいる」と回答したことも紹介された。宮崎は改善活動に取り組むに当たり、時間的な余力や、改善を必要とするモチベーションの有無が意識の差につながると指摘。谷口氏も、所属する会社自体に改善を継続する風土がある場合は後押しになるだろうと解説した。

一方で、谷口氏は「データのマネージメントをシステムに任せ、人間は異常値の感知に注力することが必要」とも分析する。あくまでも業務効率化の延長線上に生産性の向上を目指すことが重要であり、そのためには適切な役割分担やドラスティックな発想の転換がなければ望ましい効果が期待できないとも語った。

業務改善に必要な経理人材のリソース不足

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続いて、「経理・財務部門の人数は適切だと思いますか?」という質問に対し、74%が不足していると回答したことが紹介された。谷口氏は人材不足の根本的な問題解決は難しいものの、細かな点で改善を図ることは可能だと指摘。従業員のルーティーンを分析し、場合によってはそれを制限してでも業務改善に割り当てることが重要だと語った。「例えば、必要性の低いレポート提出が業務を圧迫しているというケースがあります。この場合は管理レベルを下げてでもレポートのボリュームを減らすことが重要です。何に注力するべきか現実的な判断をすることが業務改善に役立ちます」(谷口氏)

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また、宮﨑は経理財務部門における人材の流動性についての質問に触れ、約6割が「人材の流動性の高まりを実感」と回答していることや、30代には約6割が転職を経験していることを紹介。人材定着・獲得する工夫をしなければ人材不足はさらに進むだろうと語った。

最後に、谷口氏は今回の対談を振り返り、持続的な企業価値向上のためには「人材育成 ・生産性 ・ガバナンス」という3要素が重要であると強調。また、「経理財務部門に対し企業が予算を割く意識がなくてはいけない。改革に取り組んだとしても、外部環境に比べて変化が遅いようでは取り組んだことにはならない」と企業単位での意識変革を求め、対談を締めくくった。

BeyondTheBlack TOKYO 2022 の3つの基調講演・エグゼクティブ対談をまとめた
イベントレポートを公開しておりますので、こちらもぜひご覧ください。

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