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グローバル経営を強化する、DIC株式会社CFOの”頭の中”とは?

「BeyondTheBlack TOKYO 2022」レポート#5
シリーズ5回目は、DIC株式会社 取締役 常務執行役員 財務経理部門長 最高財務責任者 古田 修司 氏とブラックライン株式会社 代表取締役社長 宮﨑盛光によるエグゼクティブ対談です。

世界の60を超える国と地域でグローバルに事業を展開し、印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアの化学メーカーであるDICでは、経理財務データを一元化し、グローバルで共有するなど、データをもとにした意思決定が可能な体制をいち早く築いてきました。本対談では、経理人材のエンゲージメント向上など、今後、ますますグローバル経営を強化する同社が抱える課題と今後の方針について、ブラックライン代表の宮﨑より古田CFOへお伺いしました。

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DIC株式会社 取締役 常務執行役員 財務経理部門長 最高財務責任者 古田 修司 氏

【アジェンダ】

DICにおけるグローバル経営強化の取組み

DICの海外展開は当初、中国や東南アジアが中心で、1980年代にM&Aによって欧米に本格的に進出したが、経営は買収先に任せていた。しかし、近年は顧客がグローバル化し、“環境”への対応や、世界規模での原料価格の高騰、サプライチェーンの問題など、グローバルで一体化した取組みが必要とされていた。

そのために経営のデジタル化は必須で、中でもデータによる可視化が改革のキーであり、グローバルで経営情報を一元管理する経営コックピット(※)が構築された。経営コックピットでは売上や在庫、決算上のデータなどをヒストリカルに蓄積し、製品別、事業別、地域別などの詳細にブレイクダウンすることが可能で、古田氏も事業の推移や原料価格の高騰、経費の増大などを毎朝チェックしていると言う。

「各エンティティの責任者も同じデータを見ている。(本社と世界各地、各事業の責任者が)同じ土俵で、具体的な数字を持って話ができる。ここがグローバル経営において一番大きなポイントだと思う」

※日経新聞社 “<市場と企業>財務力を磨く「いでよデジタルCFO」”
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69952960S1A310C2DTA000/?unlock=1

グローバル経営強化における今後の課題

古田氏はグローバル経営強化における今後の課題として、さらなるデータの可視化を上げた。経営コックピットでリアルタイムに分析できているのは地球の半分(日本、中国、東南アジア)で、欧米のデータはリアルタイムではなく、粒度も粗い。このデータを統合してグローバル全体が同じレベルで分析できるようにするのが直近の課題だと言う。

また、データの可視化と共有は社内だけに留まらない。原料価格が高騰し、インフレの影響などで経費も上昇する中で、顧客が納得する売価を提示し、値上げをタイムリーに実施するためにも、データの可視化が重要になっている。
「どうすればお互いにメリットがでるかを含めて、顧客と対話する上でも、リアルなデータを共有することが重要だと思う」

経理人材のエンゲージメント向上はなぜ必要か?

DICにおいて経理人材のエンゲージメト向上が必要と感じた背景は“経理人材の流動化”だと言う。
経理人材の流動化はDICに限った話ではなく、日本CFO協会のサーベイでも経理財務部門に在籍する人の6割が30代までに転職を経験済みと回答しており、今後は人材獲得(現行部員の定着化と外部からの採用)の重要性がますます高まることが予想される。

こうした背景に加え、コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大もあり、現在、DICでは全社をあげてワークスタイルの改革が進められている。「従業員のエンゲージメントが高い会社は業績も良いという傾向があることも含め、エンゲージメントを高めることでDICという会社も良くなっていくと考え、取組を進めている。」

エンゲージメント向上のための施策

続けて、DICの経理部門でのエンゲージメント向上の施策について3つの具体的な取組みが紹介された。

  1. エンゲージメントの数値化:
    まずはエンゲージメントに関する社員調査を行い、エンゲージメントを数値化(可視化)する。
  2. 月次のOne on One ミーティングでのフィードバック
    “個人の評価がうまくフィードバックできていない“、”自分の貢献度が見えづらい“という調査結果を踏まえ、月次のOne on One ミーティングで良い点や改善点をフィードバックする。
  3. 将来のキャリアプランについてのディスカッション
    One on One の中で将来のキャリアプランについてディスカッションし、本人の意向も踏まえた上でキャリアプランを考える。

企業としては、働く環境を良くし、本人にあったキャリアプランを提示することで定着化率を高め、特に若い経理部員に対してはローテーションで経理部門の中でいろんな仕事を経験させ、本人の進みたい方向性が見えてきたところで、なるべく本人の意向に沿いたいというのが古田氏の考えである。

また、現在DICではBlackLineの導入が進められているが、BlackLineがキャリアを広げるきっかけになることもあると言う。「BlackLineの導入プロジェクトでは、経理のあるべきプロセスについて海外のメンバーともディスカッションしている。ここに本社だけじゃなく、国内のグループ会社の経理やシェアードサービスのメンバーも参加させることは、日常業務とは異なるよりクリエティブな業務に関われるだけでなく、DICがグローバル企業であることを実感できる非常にいい機会だと思う。」

そして、さらなるエンゲージメント向上においてもBlackLineは重要な役割を担っている。「エンゲージメント向上は仕事の満足度だけでなく、ワークライフバランスも重要。他の企業と同様、DICの経理部門は残業が多い。そういうところから改善を進め、自分に投資する時間、自分の時間を持つことがエンゲージメントのさらなる向上につながると思う。そのためにはデジタルを徹底活用して効率化を進めることが必要であり、BlackLineに期待している。」

経理部門の変革について今後のビジョン

CFOとしてやるべきことはたくさんある中で、古田氏がひとつあげたのは“人への投資”。DICは全社的なワークスタイル改革の中でダイバーシティインクルージョンを進めており、経理部門においても女性の活用や海外人材の登用などの成果を見せているが、これをさらに推し進めるためにはハード面とソフト面、両方での改革が必要である。具体的な取組みとして、ハード面においてはリモートワーク環境の整備を進め、ソフト面においては柔軟な働き方を実現し、継続して運用するための制度を整えている必要があると言う。

日本企業が企業価値を高める上で“人的資本”が重要なファクターであることは、エーザイのシニアアドバイザーの柳氏による基調講演(※BLOGリンク差し込み)でも紹介されており、対談の中で紹介されたDICの取組みと古田氏のビジョンからは、データドリブンの経営体制の構築に加えて、人的資本への投資という点においても一歩先行く経営を目指すDICの姿が垣間見える。

古田氏にはグローバル経営と人材エンゲージメントの2軸でDICの取組みやCFOとしての考えをお聞きしたが、それに付随する様々な業務変革、業務改善のヒントも数多くみられ、弊社代表宮﨑の、本対談の視聴者から「経理業務の変革に着手する勇気をもらえた」という声が数多くあがることへの期待と、古田氏への感謝の言葉で、本対談は締めくくられた。

<スピーカー>
DIC株式会社
取締役 常務執行役員 財務経理部門長 最高財務責任者
古田 修司 氏

ブラックライン株式会社
代表取締役社長
宮﨑 盛光

BeyondTheBlack TOKYO 2022 の3つの基調講演・エグゼクティブ対談をまとめた
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