NECグループ経理シェアードサービスが目指す、複数社業務を進める上で必要な真の標準化・効率化とは?
「BeyondTheBlack TOKYO 2022」レポート#8
NECグループ11社の経理業務を受託するシェアード会社、NECマネジメントパートナー。委託元の会社毎に周辺システムや業務プロセスが異なるために、組織は機能軸であるものの、業務の標準化や効率化には課題が残されていました。
本セッションでは、プロジェクトメンバーの一員として2020年11月よりBlackLineを活用した経理DXに取り組まれてきた、NECマネジメントパートナー株式会社 経理財務サービス事業部 主任の加藤氏より、管理者側と実務者側のそれぞれがITを活用できるよう試行錯誤をされてきた道のりについて、弊社シニアインプリメンテーションコンサルタントの橋本が話を伺いしました。
NECマネジメントパートナー株式会社 経理財務サービス事業部 主任 加藤 優飛氏
【アジェンダ】
- BlackLine導入の経緯と効果
- 導入プロジェクトで工夫したこと
- シェアードサービスの価値
- シェアードサービスにおけるBlackLineの貢献ポイント
- 今後の方針
- BlackLine導入を検討中のみなさまへのメッセージ
BlackLine導入の経緯と効果
NECはシェアードサービス会社設立に際し、委託元の各社の経理業務を集約したものの、その後の標準化は思うようには進まなかった。その要因は、委託元会社の業態や企業規模が異なる中で経理の全業務を標準化の対象としたため、業務内容が多岐に渡ったことにある。また、各社の業務の洗い出しの粒度が担当者ごとにバラバラで、標準化の前提となる現行業務プロセスの可視化に難航していたことも要因の一つであった。
そこでBlackLineのタスク管理を使って、各社の業務を可視化することが最初のターゲットとなった。加藤氏はBlackLineの導入プロジェクトを振り返り、こう語った。
「ある程度業務を標準化してからのBlackLine導入ではなく、バラバラなままBlackLineに乗せた。業務の標準化が予めできていれば、設定作業はもっと楽だったかもしれないが、BlackLineに各社の業務プロセスを乗せたことで各社横並びでプロセスを比較できるようになり、可視化に難航していた自社にとっては大きなメリットだった。業務が標準化できていないとBlackLineを導入できない、ということでは決してないと思う。」
そして、業務プロセスの可視化に続く効果として加藤氏は、NECマネジメントパートナーのシステム環境ならではの効果を上げた。
「自社では委託元の企業規模に応じ複数の会計システムを運用しているが、BlackLineの導入によって各社の業務プロセスが一元管理できるようになった。タスク管理上には業務の手順書やマニュアルが整備され、業務に不慣れな人や前任から業務を引き継いだ人の立ち上がりがスムーズになった。」
導入プロジェクトで工夫したこと
加藤氏がプロジェクトで一番気をつけたのが「システムを使う人の理解を得ること」。
業務のやり方が変わる人に新しいシステムのメリットを示す必要があり、そのために、どうすれば使いやすいか、使ってもらえるかということを第一に考え、導入する側と使う側の両方の視点をうまく両立させながら導入を進めた。また、タスク管理だけでは劇的な改善は難しいので、タスク管理以外の機能も活用した将来像を伝えることで、BlackLineに期待を持ってもらうことも欠かさなかったと言う。システムを使う人の理解を重視する加藤様のスタンスは次のコメントにもよく表れている。
「(導入後も)現場とのコミュニケーションを大切にし、現場からのリクエストを聞きながら、BlackLineの使い方をブラッシュアップしていく。システムの稼働後も、より付加価値の高い使い方を検討し、取り入れるサイクルをみんなで回すことができていると思う。」
シェアードサービスの価値
続いて、シェアードサービスという業務形態の価値について、加藤氏に組織の観点と個人の観点の両方についてお聞きした。
「組織の観点でいえば、シェアードサービスで複数の会社の業務プロセスを知ることで、各社のプロセスの良いところが共有でき、グループ全体での経理業務の最適化が促進される。個人で言えば、1つのタスクでも担当している会社の数だけ業務量は増えるが、経験値も増える。月1回のタスクが一か月で5回経験できる。1社だけだと経験できない場数を踏めることは、自分のキャリアという観点でメリットと考えている。しかし、それだけの業務量をこなす必要があるので、標準化、効率化はシェアードサービスには欠かせない。」
シェアードサービスにおけるBlackLineの貢献ポイント
この問いに対して、加藤氏は2つのポイントをあげた。
- 「業務プロセスの可視化」
各社の業務プロセスを横並びで比較することで、標準化が必要な箇所、不要な箇所(すでに共通化されている箇所)が明確になって標準化が進めやすくなると同時に、業務の効率化のヒントもそこから得ることができる。 - 「自分が今何をすればいいか明確になる」
複数社の経理業務を担当する中で、自分がいつ、どの会社のどのタスクをやればいいのかがクリアになる。効率的な仕事の順番付けが容易になる。手戻りがなくなるし、時間を有効活用できる。
また、グループ各社の経理業務を束ねるシェアードサービス会社ならではの(個人的な)将来構想について、加藤氏はこう語った。
「シェアードサービスは委託元の会社との連携が不可欠。いろんな業態、事業規模の会社がある中で、委託元の会社にもBlackLineを導入することで、NECグループ全体の経理の流れをBlackLine上で一元管理するところを目指していければと考えている。」
今後の方針
NECマネジメントパートナーでは、現在、BlackLine導入のフェーズ2として、マッチングモジュールの導入を進めており、並行してその他のモジュールの検証を進めている。また、前述の通り委託元会社の規模に応じて会計システムが複数存在するので、そのシステム環境の違いから生じる課題をBlackLineで吸収できないか、検討を進めている。
BlackLine導入を検討中のみなさまへのメッセージ
セッションの最後、加藤氏から導入検討中の方々に以下のメッセージが送られた。
BlackLineは通常の会計システムとは違って、経理部員みんなで作り上げることができるシステム。使い方について現場から疑問や提案の声を上げれば、それがシステムに反映される。みんなで作り上げるという気持ちで取り組むことで、システムがより良いものとなり、愛着も湧く。BlackLineのコンサルタントもユーザーの声に応えてくれるので、気軽に相談するといいと思う。
加藤様、シェアードサービス会社ならではの有意義なお話の数々、ありがとうございました。
<スピーカー>
NECマネジメントパートナー株式会社
経理財務サービス事業部 主任
加藤 優飛 氏
ブラックライン株式会社
シニアインプリメンテーションコンサルタント
橋本英晃