BlackLine Summit2025―AI活用で変化するCFOの役割 ~KPMGの調査結果からみるCFO組織におけるAIの活用状況と可能性
「BlackLine Summit2025」レポート#2
2025年2月28日(金)、ブラックライン株式会社主催による「BlackLine Summit 2025」が東京ミッドタウンで開催されました。会場には多くの企業のCFOをはじめ、経理財務の業務に関わる方々にご参加いただきました。
今回のレポートでは、KPMGが実施したサーベイ結果(※)に基づき、CFO組織におけるAIの活用状況と今後求められるCFOの役割や能力の変化について、講演のサマリーを紹介します。
「AI活用で変化するCFOの役割
~KPMGの調査結果からみるCFO組織におけるAIの活用状況と可能性」
<アジェンダ>
日本企業におけるCFOの役割の変化
CFOを設置する日本企業は年々増加しており、CFOの役割について大きく3つの変化について紹介されました。
- CFOの管掌業務範囲が拡大している
- CFOの重要性が増している
- CFOに求められる能力が変化している
CFOの管掌範囲の拡大
下図右のグラフが示すように、従来の経理財務領域に加えて、経営戦略・経営企画といった攻めの領域と、内部統制・リスク管理のような守りの領域の両面で、その管掌範囲が広がっています。
また、4割近いCFOがサステナビリティ推進を管掌していますが、「サステナビリティ情報や開示に関する専門人材の確保(65%)」や「開示プロセス・体制の整備(55%)」といった人的課題と「開示情報の収集・利用のためのデータ基盤の整備(34%)」などのシステム面の課題を抱えており、模索しながら対応を進めるCFOの姿が浮かびあがっています。
CFOの重要性が増している
管掌範囲の広がりが示すように、金庫番から経営の参謀へとCFOの役割が変化するとともに、その重要性が増しています。それは、最も重要性が高い業務として「事業の選択と集中-果断な経営判断の役割(60%)」をあげるCFOが最も多いという結果にも表れています。一方で、「事業ポートフォリオ構成の方針の策定済み」とするCFOは全体の1/3に留まる結果となりました。
CFOに求められる能力の変化
CFOに求められる能力や素養に関する調査では、経営の参謀としての重要性が増していることを反映し、「経営やビジネスの理解と貢献意欲(87%)」「課題解決・提案力(79%)」「コミュニケーション・折衝力(69%)」が、「経理・財務領域の高度な専門性(63%)」を抑えて上位3つを占める結果となりました。
経理財務領域におけるグローバルでのAI活用状況
はじめに、経理財務領域での昨年4月から9月にかけての主要10か国のAI活用状況が紹介されました。活用が加速した国が多い中でEUでの進捗が鈍化していますが、同地域ではAI規制に関する指針が他の地域よりも進んでいるためと考えられます。また、日本はUSに次いで2番目に進捗が進んでいますが、これは生成AIの普及がその要因ではないかと推測されます。
AIを活用している業務分野は下グラフのように進捗度にばらつきはあるものの、幅広い分野で利用されています。また、AI利用の成熟度の違いによる分野別の活用状況を比較すると、先行企業(「リーダー企業」)では生成AIの活用も進んでいることがうかがえます。
日本企業における生成AIの活用状況
続いて、日本企業の経理財務領域における生成AIの利用状況と活用業務、そして生成AI活用の課題が紹介されました。
生成AIの利用状況では、売上高5,000億円未満の企業と5,000億円以上の企業とで大きく差がでましたが、大規模企業でも経理財務領域に生成AIを利用している企業は31%に留まり、5,000億未満では13%という結果でした。
活用業務については下グラフのように、文書の生成や翻訳、対話形式の情報検索が中心で、分析・モニタリングや将来予測などの経営の意思決定支援に直接関連のある業務での利用はあまり進んでいない結果となりました。
生成AI活用の課題については、利用状況に関わらず「生成AI活用に必要なスキル人材の不足」、「生成AI活用の戦略の構築」が上位を占める結果となり、既に利用している企業では「効果的な活用方法が見いだせず、ROIが不明確である」ことが課題としてあげられています。
生成AIの取組事例
生成AIのユースケースについてKPMGの知見とコンサルティングの実績をもとに難易度や課題について下図を用いて解説した後、「経理問い合わせ対応」「実質リース判定」「開示資料チェック」「子会社報告財務諸表分析」の4つのユースケースが紹介されました。なお、ユースケースについては、KPMGに問合せいただければ、内容によってはデモなどもご覧いただきながら詳細を説明するこが可能とのことです。
AIを活用した未来の経理財務業務
講演の最後にBlackLineと生成AIを組み合わせたソリューションのイメージと、AIを活用した未来の経理財務業務が紹介されました。
BlackLineと生成AIの組合せ
オペレーション基盤であるBlackLineに定義したタスクと、経理部門向け生成AIを紐付けることで、作業過程でのサポートや処理の自動化、さらには分析/リスクの提示など、実務で幅広く活用できる環境を構築することが可能になると考えられます。
AIエージェントを活用した未来の経理財務業務
近い将来、経理ユーザーがユーザーインターフェースであるAIエージェントに指示することで、その裏で財務会計データや管理会計データだけでなく、メールやPDFファイルなどの非構造化データも含めてアクセスし、高度な判断や仕訳起票に代表されるような業務処理を自動化することが考えられます。その結果をユーザーにドラフトとして表示し、ユーザーはその内容のチェックや詳細分析を行うといった形で、人と生成AIが協業するようになると考えられます。
※調査レポートの詳細についてはリンクよりご確認ください。
「KPMG Japan CFO Survey 2024」
「KPMG global AI in finance report」