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花王のリモート決算推進プロジェクト ~スモールサクセスから始める工数削減、ペーパレス、統制強化~

「BeyondTheBlack TOKYO 2021」レポート

歴史を擁する大企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む上では、レガシーともいえる既存システムや業務プロセスがとかく重石となりやすい。

だが、少人数・短期間でのBlackLine導入を先行し、それに合わせ業務プロセスを刷新するなど、スピード感ある取り組みで、完全デジタルリモート決算を目指しているのが大手消費財化学メーカーの花王だ。そのチャレンジと具体的な成果について、プロジェクトの全容、過去、現在、将来を見据えたジャーニーを同社会計財務部門管理部長の牧野秀生氏、BlackLineを活用した具体的な決算業務効率化について同部門管理部部長・制度会計担当の今川康則氏に語ってもらった。

コロナ禍で経理部門は10~20%の出社率で業務を回す事態に

同社はハイジーン&リビングケア、ヘルス&ビューティケア、ライフケア、化粧品、ケミカルといった事業分野で多様な商品を展開し、世界中で高い支持を集める創業130余年の老舗メーカーだ。国内だけでも本社、工場、子会社において多くの経理人材を擁するが「企業理念を構成する基本となる価値観の一つ“絶えざる革新”の下、会計財務部門でも一体となってITを活用した革新性と効率性を追求してまいりました」と牧野氏は語る。

だが、先進性を持って新たな会計ルールやグローバル対応などに積極的に取り組む一方、2020年の緊急事態宣言発令を発端とするコロナ禍により改めて課題が浮かび上がる。オペレーショナルファイナンス(一般会計・制度会計)分野で、従来アナログ作業で行っていた業務プロセスの刷新だ。

在宅勤務を原則に会社全体で出社率30%以内に抑えるべく、コーポレート部門の会計財務部門については10~20%の出社率が課せられ、「紙ベースで行っていた振替モニターの発行や手書きサイン業務、マンパワーで行っていたタスク管理、勘定照合といった作業の改革に迫られることとなりました」(牧野氏)。

在宅作業の進捗を見える化し“安心の担保”を実現

そのソリューションとして着目したのがBlackLineだった。既に導入済だった同社欧米拠点へのヒアリングや他社の事例を知り、その効果を確信。段階的に導入・稼働を進めていくことになる。

第1フェーズとして20年10月よりスモール&クイックを重視し、本社会計財務部門と一工場、一子会社に勘定照合、タスク管理の2機能を適用し、12月末から稼働。「リモート作業でメンバーの作業の進捗・完了度合のコミュニケーションが難しい中、業務タスクの見える化、勘定明細添付などの実現で、まずは“安心の担保”が達成できたことは大きかったですね」と牧野氏。

スモールサクセスを実感したところで、第2フェーズとして横展開を目標に、21年からマッチング・仕訳機能も追加し国内グループ会社にも導入。「自動仕訳、マッチング効率化によってさらなる能率化をはかり、全社部門一体となって取り組みを進めています」と力強く語る。

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タスク管理、勘定照合の一元管理で内部統制の強化もはかる

では、具体的にはどのようなプロセスで決算業務効率化を進めていったのか。今川氏が解説していく。改めて同社で決算業務の課題として認識されたのが以下の2つ、「標準化・自動化」と「可視化・統制強化」だった。

その内、前者の業務の属人化・ブラックボックス化、決算数字の照合や調整をするシステム・仕組みがないといった課題はコロナ禍前から認識されていたものだ。一方、後者の「可視化・統制強化」、具体的には決算作業の進捗状況が見えない、決算情報が散在していて見つけにくい、紙での印刷・押印業務が難しいといった課題は在宅勤務で仕事のスタイルが大きく変わったことから喫緊の課題として浮上する。

そこで、「まずはスモール&クイックで、手作業、エクセル、メールのやりとり、目検で行っていた残高照合、明細突合、修正仕訳といった作業の効率化、可視化をはかるべくBlackLineのタスク管理・勘定照合導入からスタートしました」と今川氏。

タスク管理についてはエクセルでの管理を止め、BlackLine上で一元管理し進捗を共有。リアルタイムダッシュボードやレポート機能による決算業務プロセスの可視化、自動アラートによる効率化などを実現する。勘定照合についても、エクセル、PDF、紙などのマニュアル照合だったプロセスをBlackLine上で一元管理。勘定照合プロセスの効率化・標準化、内部統制の強化をはかっていく。

21年6月時点で国内関連会社のほぼ全社に横展開。「稼働をスタートした20年12月と比較し、タスク管理件数は490件から6月時点で1800件、勘定照合も同様に1500件から4万500件をこなせるようになっています」という。

このフェーズ1の成果として、「ダッシュボード、レポートによるタスクと勘定照合の進捗・負荷のリアルタイムでの把握」は完全に実現。押印廃止・紙の印刷100%削減も達成間近だという。

監査人・監査部門の効率化にも適用し、能率化を推進

21年からのフェーズ2で追加したマッチング・仕訳入力の導入では、仮勘定整理のロジックを組んだ自動マッチングや、銀行勘定における入金消込の明細データとの自動マッチング、人を介して行っていた仕訳入力についても自動仕訳を進めている。

具体的な成果はこれからだが、仕訳入力とタスク管理の連動、ダッシュボードでの仕訳の進捗状況のリアルタイム把握、ペーパレスについては高い効果を期待。「全体として決算業務時間の30%削減を見込んでいます」と今川氏は言う。

さらにフェーズ3として年内にはマッチング&仕訳入力のシナリオ拡充、横展開を進め、監査人・監査部門の効率化にも適用。効率化から能率化を推進していく構えだ。

国内経理業務のSSC化とそのグローバル展開に向け、革新に挑み続ける

牧野氏はプロジェクトの進め方において従来の「PDCA」サイクルではなく、従来のタスク管理内容をそのままBlackLineに移行し、早期運用(=Do)を優先。タスク管理を見える化することで気づいたムダや重複を見直し、横串展開を進めるなどプロセスを刷新していく。こうした「DCAP」サイクルでプロジェクトを進め、常に進化させていくことが肝要だと提言する。

現在は80~90%の在宅でリモート決算を実践。さらにブラッシュアップをくり返し、フェーズ4の“将来像”として、「勤務場所を問わず在宅100%のリモート決算を実現するとともに、ガバナンスの強化と効率化のため国内経理業務のSSC化とそのグローバル展開を目指していきます」と牧野氏。

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創業以来、これまでのやり方にとらわれず“絶えざる革新”に挑んできた同社のベストプラクティスに向けた挑戦はこれからも続きそうだ。

<スピーカー>
花王株式会社
会計財務部門 管理部長 牧野 秀生氏
会計財務部門 管理部 部長(制度会計担当) 今川 康則氏

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