9か月で決算工数20%削減を実現、未来志向型業務へのシフトを目指す
「BeyondTheBlack TOKYO 2021」レポート 株式会社セゾン情報システムズ様
従来のシステムインテグレーターの枠を超え、“データエンジニアリングカンパニー”を標榜し、システム・データ間の連携を実現するデータマネジメントソリューション「HULFT(ハルフト)」や、「DataSpider(データスパイダー)」を活かしたリンケージサービスで成長を遂げるセゾン情報システムズ。
2014年、よりマネジメントに資する財務経理部門を目指し「モダンファイナンスプロジェクト」を始動。2019年12月よりBlackLineを3か月という短期間で導入し、2020年3月の期末決算においても完全リモートで実施した背景を「BeyondTheBlack TOKYO 2021」で公開し、注目を集めた。
今回は完全リモート決算から1年を経ての振り返り、成果、進化し続ける同社の「モダンファイナンス」の目指す姿について財務経理室長工藤祐樹氏に語ってもらった。
- 経理の本来の目的・マネジメントへの貢献を目指しデジタル化に取り組む
- 2014年からの取り組みでコロナ禍のリモート決算も問題なく実現
- BlackLineの早期運用で効果を実感しつつ業務設計を改善
- 2022年3月期末までに決算工数30%削減を見込む
- BlackLineの「仕訳入力」「差異分析」の機能追加で効率化・統制を強化
経理の本来の目的・マネジメントへの貢献を目指しデジタル化に取り組む
新型コロナ感染症拡大により、2020年3月、東京都で初の緊急事態宣言が出されて以降、多くの業種業界、職種においてリモートワークへの対応を始めとしたビジネスのスタイルの変容を余儀なくされた。
しかし、工藤氏は「新しい会計ルールへの対応やグローバル多通貨対応、人材不足や働き方改革といった財務経理部門を取り巻く環境の変化は、コロナ禍の前から叫ばれていたものです」と指摘。
こうした課題、グローバルな動きも見据え、ペーパレス化を始め属人的な業務から電子化、自動化、可視化を進めていくのは財務経理部の当然のミッションといえよう。
加えて、デジタル化の本来の目的は「テクノロジーの力で業務効率化をはかり、余剰リソースを経営戦略立案や意思決定に資する有益な情報やデータを提供していくことにあります」といい、リモート決算の実現はそのための手段の一つにすぎないと断言する。
2014年からの取り組みでコロナ禍のリモート決算も問題なく実現
同社ではこうした根本的な課題感から、財務経理部門のプロセス刷新をはかる「モダンファイナンスプロジェクト」を稼働。2014年に旅費・経費精算システム「Concur」導入を皮切りに、2015年にはコーポレートカード導入による現金仮払い廃止と改革を進める。さらに職場でのフリーアドレス制移行により従来の紙や人力によるアナログなプロセスが立ち行かなくなる転機を経て、2019年12月に「BlackLine」を導入。デジタル化へ大きく舵を切ることとなる。
結果、コロナ禍により2020年2月末より在宅勤務が原則適用されたものの、初めての月次のリモート決算は問題なく完了。期末決算においても引き続き在宅勤務で対応することができたという。
BlackLineの早期運用で効果を実感しつつ業務設計を改善
完全リモート決算から1年を経て、工藤氏は改めてリモート決算を成功させるポイントとして、①ペーパレス化、②テクノロジーの整備、③リモートワークに合わせた業務の設計を挙げ、まずは①②のプロセスを先に進め、そこに合わせて③の業務設計を進めることを助言する。
つまり、従来の「PDCA」サイクルではなく、早期運用で効果を実感しつつ、プロセスの見直しをはかる「DCAP」でプロジェクトを推進することが有効だという。
「スモールスタートで各メンバーが改善効果を実感し、タスクの見直しや業務改善につなげていくことがポジティブサイクルの実現につながります」と工藤氏。
さらにスピード感を持ってプロセスの刷新と組織変革を進めていく上では、既存のクラウドサービスを利用し、エコシステムを構築していくことがポイントだという。
同社では、営業支援システムに「Salesforce」、購買システムには「SAP Ariba」など、様々な情報に関し最適なクラウドサービスを利用し、それぞれを同社製品のデータ連携基盤「DataSpider」を介して自動連携し、会計システムの「SAP」に集約している。
財務経理部門としては、従来、連携データの整合性について決算時に手動でチェックしていた。決算プラットフォーム「BlackLine」導入で「SAP」との連携により様々な業務の効率化、決算の質の向上を実現している。
※クラウドサービスを活用した同社エコシステム(講演資料より抜粋)
2022年3月期末までに決算工数30%削減を見込む
では、具体的に「BlackLine」導入により、どういった効果が上がっているのか。
同社では、「BlackLine」の中でも「勘定照合」「タスク管理」「マッチング」の3機能を導入。
「3つの機能を導入することで、これまでエクセルで管理していた決算タスクがダッシュボードで可視化され、電子承認による統制強化、膨大な項目を目視で確認していたのがデータ連携で突合作業の自動化が実現しました」(工藤氏)。
情報の一元管理・電子化で過去のデータ検索性も向上し、ペーパレス化で書類の管理コストも削減するなど大きな業務効率化につながっているという。
具体的な決算にかかる業務時間の前年同期比では、2019年12月第三四半期決算ではペーパレス、自動承認により4.9%減、2020年3月期末決算ではリモート決算だけでなく、リモート監査対応により15.2%減、2020年6月第一四半期決算では、さらなるシステム・データ連携、タスク見直し一巡により、20.7%減を実現。
2022年3月期末までには、目標に掲げる30%削減を達成する構えだ。
BlackLineの「仕訳入力」「差異分析」の機能追加で効率化・統制を強化
さらなるBlackLineの有効活用に向けては「まずは月次決算に展開したい」と工藤氏。マッチング機能を拡充し、立て替え経費の業務フローの効率化など、他の業務や海外子会社にも適用を進めていくという。
加えて、決算業務プロセスのDXを進化させるべく、BlackLineの機能として「仕訳入力」と「差異分析」を追加する予定だ。
システム連携以外の手入力をしていた毎月定額の提携仕訳から自動化を進め、ファイルストレージに格納していた伝票、証憑もBlackLine上で保存。承認作業もBlackLine上で行うことでさらなる業務効率化と統制強化を実現していきたいという。
※データ連携で実現する決算業務フロー(講演資料より抜粋)
差異分析に係る準備も自動化し、分析結果を一元的に管理・共有することで、効率化に加え情報自体の信頼性向上も図っていく計画だ。
こうして月次決算から期末決算までをBlackLineでワンストップで完結させることで、「リソースを本来担うべき戦略立案、意思決定支援といった未来志向型業務に振り分け、企業価値向上につなげると共に、蓄積した知見と同社のリンケージサービスを活用したお客様のモダンファイナンス実現のサポートを行ってまいります」と工藤氏。
今後の新しいチャレンジ、成果のさらなる向上に注目したい。
<スピーカー>
株式会社セゾン情報システムズ
財務経理室 室長 工藤 祐樹 氏