タスク管理ソリューション選択において想定すべき最重要リスクとは
タスク管理とは、業務タスクの進捗管理やデータ・情報の共有を目的とした仕組みです。コロナ禍での在宅ワーク・リモートワークの広がりを受けて、同僚や上司とのコミュニケーションや、リモートでの会議や商談をどう円滑に行うのか、そうした課題を解決・サポートするためのタスク管理のソフトウェアが数多く出てきており、TVやWebで各社のCMを目にする機会も増えてきました。それらは大きく業務業種を問わず利用できる「汎用型(ツール)」と特定の業務支援を行う「業務特化型(アプリケーション)」に大別されます。タスク管理機能だけを一見すると、似たような機能を持つ同じような仕組みに見えます。私共ブラックラインは経理領域における「業務特化型」のアプリケーションを扱っておりその中にタスク管理機能を有していますが、お客様から他社「汎用型」との違いについてよく質問をお受けします。ここでは、決算業務(決算関連業務含む)での活用を題材に、「汎用型」と「業務特化型」の違いについて掘り下げて考察してみたいと思います。
自由度高い「汎用型(ツール)」の盲点とは
「汎用型」は、基本的には業務の種類や用途を問わず、その名の通り「汎用」的にいろいろな業務に使える、というのが大きな強みです。個人的なイメージですが、ホワイトキャンバスがあって、そこにクレヨンや定規、コンパスなどの道具があるので、それらを使って好きなように描画下さい、という仕組みと捉えています。一見自由度が高くてよさそうではあるのですが、これは裏を返すと、どんな構造でどんなデザインの画を描くのか全てユーザ側に委ねられる、ということを意味します。子供のお絵かきであればそれも創造性・独創性を育てるうえでメリットは大きいと思いますが、ビジネスの世界ではどうでしょうか?この世界観を業務システムに当てはめて考えてみると、これはなかなか大変だと思います。
まず、業務プロセスと業務要件を整理し、要件を充足しうる機能を配置するというステップがあります。必要・必須の要件を満たしながら、TO-BE像をどういう絵姿に持っていくのかを設計し、個々の要件を対象のツールで実現できるのかどうか・できるとしたらどう機能実装するのかを調査・検討し、実効性や効果を評価していくことになります。途中で、想定以上に開発コストが膨らんでしまったり、設計漏れあるいは機能の不備が発見されたりすれば、TO-BE像の設計に戻って再度やり直しが発生するリスクもあります。また「要件」と言っても、「どの機能を使うのか」という話だけではなく、ユーザインタフェース・権限・ワークフロー・セキュリティ・ガバナンス…といったさまざまな視点の「要件」がそこには存在し、その一つ一つを1から設計・実装していかなくてはならない大変さが、「汎用型」の盲点であると考えます。
「汎用型(ツール)」利用における導入担当者が負うリスク
1から“自由に”設計可能な「汎用型」の場合、自由度の高い利点が、そのままユーザ側で負わなければならない「リスク」となる点も、実は重要なポイントです。「業務特化型」であれば、最初から実業務を想定した機能やメニュー、設計がなされているため、その範囲について責任を負うのは基本的にはアプリケーションベンダーであり、ユーザやインプリする要員(社外・社内含む)が関知するところではありません。機能に不備・不足があれば、ベンダーに対応を要望したりユーザに説明したりという対応は必要になりますが、「機能がない」ことについてユーザから責められることはまずありません。
それに対して「汎用型」は、それを用いてどう設計するかはあくまでユーザ側の責任となりますので、そこに不具合を生むプロセスや仕様が生まれても、ベンダー側は基本的には知らん顔をすることとなります。先述した各要件(機能・ユーザインタフェース・権限・ワークフロー・セキュリティ・ガバナンス等)を個々に設計し、全てを網羅し適正に遅滞なく決算プロセスを回せるようになることに責任を持つ、これは誰にとっても大変ハードルの高いことではないかと思います。決算といった重要性・機密性の高く、間違いの許されない業務のプロセスをツールによってユーザ主体で設計していく、これはとても大きなリスクではないでしょうか。
「業務特化型(アプリケーション)」の強み
「汎用型」と違って、最初から経理/決算の実業務を想定して機能設計されたBlackLineのような業務特化型のアプリケーションの場合は、必要必須の各要件があらかじめ製品に組み込まれています。レースに例えて言うならば、スタートラインを何百メートルも先に持っていくことができて、ゴールをより近くに見据えてスタートすることができます。当然、全体のリスクも最小限に抑えることができますし、ユーザが負うリスクも大幅に限定されます。
導入容易性やリスク軽減に加えて、次に来る「業務特化型」の強みとしては、拡張性が挙げられます。例えばBlackLineでは、決算・監査の合理化を実現した先に、業務負荷やボトルネックの分析を行ったり、プロセスを拡大して日常の経理業務へ活用したり、グループ会社の管理へ裾野を広げガバナンスを強化したり、といった展開シナリオを想定、そのための機能やソリューションがあらかじめ組み込まれています。これは先のレースの例で言えば、「汎用型」が最初のレース後に、次はどの種目に望めばよいのか考えて、その競技のスタート地点やゴール地点から自力で探さないといけないのに対して、「業務特化型」では次の競技種目とその道筋、そして勝ち筋が最初から設定されて見えている、ということを意味します。
▲BlackLineのタスク管理ダッシュボード。承認状況や優先度等、決算作業に必要な情報が最初から組み込まれた形で使用が開始できます。
タスク管理で重視すべきポイント
製品比較をする切り口として、多くの場合、機能やコストに目が行きがちです。その2つが製品選択のうえで重要なポイントであることは否定しませんが、問題は、上記のようなツールとアプリケーションの特性・思想の違いを理解した上で適正に評価をしないと、「当然あると思っていた機能がないことが後で分かった」「隠れた要件が後で発覚し、コストがどんどん膨らんだ」といった大やけどになりかねない、という点にあります。あらかじめ基本的な機能が用意された「業務特化型」を導入するということは、リスクを避けて安全性も買うということと同義であり、結果としてコストも予算内・想定内に確実抑えられる、ということにつながるのではないでしょうか。
<ライター>