株価純資産倍率(PBR)
株価純資産倍率とは何か
株価純資産倍率(Price Book-value Ratio:以下、PBR)とは、株価が1株当たりの純資産の何倍になっているのかを表し、株価が割安か割高かを判断するための指標として用いられます。純資産とは、純資産とは資産から負債を控除したもので、仮に会社を解散し、仮に会社が活動をやめた場合に株主に分配される資産であるため清算価値や解散価値とも呼ばれています。PBRが1倍を下回るということは、企業の清算価値を下回っているということになり、その企業の株価は市場からの評価が低い、割安な状態であると言えます。
PBR = 株価 ÷ 1株当たりの純資産額
株価が2,450円で1株当たりの純資産額が1,750円の場合、PBR = 2,450/1,750 = 1.4
株価純資産倍率はなぜ重要か
株価は、企業が保有する資産(有形、無形を問わず)が有効に活用され、将来いくらのキャッシュを会社にもたらすのかを投資家が評価した結果です。全体的な株価の水準が一時的に下がったことによってPBRが1倍を下回る場合もありますが、PBRが一定期間低い水準が続く場合、その企業に対して投資をしても、投資を上回るリターンは期待できないと投資家から評価されていることを意味しています。仮にその企業に、高い技術力や優秀な人材など財務諸表に表現されない無形の価値(資産)があっても、経営者がそれを活用できていいないと評価されているということです。また、実際に価値の高い無形資産を保有していながらPBRが低いと、買収されるリスクも高まります。
自社の株価が低迷し、さらにPBRが1倍を下回っている場合、経営者としては自社が保有する資産を経営に活かしきれていないのではないかという問題意識を持つ必要があります。
PBRの関連用語
投資家が企業を評価する指標としてPBRと同様に株価を用いた指標に株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)があります。
PER = 株価 ÷ 1株当たりの純利益
株価が2,450円で1株当たりの純利益が200円の場合、PBR = 2,450/200 = 12.25
PBRもPERも投資家から見て株価の割安・割高感を評価する指標ですが、PBRは企業の純資産に対する割安・割高感、PERは企業収益に対する割安・割高感を示しており、一概には言えませんが、PERは短期的な投資判断の際に、PBRは長期的な投資判断の際に注目度が高いと言えます。
また、株価と利益を比較した指標として自己資本利益率(ROE:Return On Equity)があります。
ROEは以下の計算式で算出され、株主が投資した金額(資本)を企業がいかに有効に活用して、利益を上げているかを示す指標です。
ROE = ( 当期純利益 ÷ 自己資本 )x 100
自己資本とは企業の総資産から負債などの他人資本を除いた金額で、株主資本と全く同じではありませんが、ほぼ同様の意味で用いられ、PBRやPERの株価(市場価格)とは異なり、帳簿上の価格が用いられます。
日本企業のPBRは欧米企業と比べ、なぜ低いのか
日本と欧米の代表的な株価指数を構成する企業のPBRの状況を見ると、日本企業のPBRが著しく低いことがわかります(2023年1月末)。
PBR1倍未満 | PBR2倍以上 | |
日本(TOPIX) | 53% | 21% |
US(S&P500) | 3% | 75% |
EU(ストックス600) | 21% | 55% |
日本企業のPBRが低い要因として企業の内部留保が多いことや、株主への還元が少ないなど様々な理由がありますが、日本企業の利益率が欧米の企業と比べて低いことが最も大きな要因として上げられます。
そして、もうひとつ大きな要因として上げられるのが、株主に対する説明(IR)が不十分だということです。
株価には投資家の期待が反映されます。決算短信や有報で開示される財務情報は企業の経営成績ですが、投資家はこうした結果よりも、企業がこれからどう成長するか、利益(リターン)を上げるかに大きな関心と期待を寄せています。経営者が財務諸表で表される資産と、高い技術や優秀な人材、ノウハウなど財務諸表には表れない資産をどう活用して、成長し、利益を上げるかについて投資家に説明することが、投資家から求められています。