ディスクロージャー
ディスクロージャーとは何か
ディスクロージャーとは、企業が一般の投資家や株主、債権者に対して財務情報、非財務情報など、企業の経営実態に関する情報を提供することです。法律や規則に基づく情報の開示と、企業が自主的に行う情報開示とがあり、上場企業が決算後に公表する財務諸表や有価証券報告書などは前者に該当し、決算発表説明会やホームページでの業績の概況などの掲載は後者に該当します。
ディスクロージャーはなぜ重要か
企業が経営状況や事業内容などを投資家や株主などのステークホルダーに対して開示することは、企業の透明性の向上につながり、ステークホルダーからの信用や信頼を得ることができます。
また、消費者向けの事業を手がけている企業の場合は、ディスクロージャーによる企業の透明性の向上は消費者に対して安心感を与え、消費者から選ばれる企業としての立ち位置を確保しやすくなります。
近年では企業価値を判断する上で財務情報に加え、非財務情報の重要性が高まっていますが、日本企業は一般的に人的資本や環境対策などの情報開示や説明が不十分であるという評価が、特に海外投資家の間にあり、これが日本企業の株価純資産倍率(PBR)が欧米企業に比べて低い要因のひとつとなっています。
ディスクロージャーに関する規制や法律にはどんなものがあるか
ディスクロージャーに関する法律は日本で以下の2つがあります。
<金融商品取引法>
金融商品取引法におけるディスクロージャー制度は、有価証券の発行市場もしくは流通市場において、一般の投資家が投資の判断を行ううえで必要となる十分な資料を提供することで、投資家自身の責任で投資に必要な判断をさせることを目的としています。
<会社法>
会社法では株主や債権者に対する情報公開を規定しています。全ての会社は、定時株主総会の招集通知に計算書類(貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書)及び事業報告の提供が義務付けられています。
上記の法律以外に、証券取引所や日本証券業協会は、投資家保護を目的として、上場企業に対して業績等に関する情報について適時、適切に開示するタイムリー・ディスクロージャーを要請しています。いわゆる「決算開示の45日ルール」は、決算短信と四半期報告書の2つの開示について適用される東京証券取引所の規程です。ただし決算短信に関しては早期開示を取引所は求めており、できるだけ30日以内(翌月以内)での開示が望ましいとしています。
ディスクロージャーに関連する用語
ディスクロージャーに関連する主な用語として以下のようなものがあります。
<決算短信>
決算短信とは、上場会社が決算に関する情報を速報として公表する資料で、証券取引所の有価証券上場規程により、決算に関する情報が確定したら直ちにその内容を開示することが義務付けられています。開示内容は、連結業績に関するサマリー情報と添付資料で構成され、業績のサマリー情報として連結経営成績、連結財務状態、連結キャッシュフローの状況などがあり、添付資料として経営成績・財政状態の概況及び今後の見通し、連結財務諸表及び主な注記などがあります。
証券取引所は上場会社に対して決算発表の早期化を要請しており、開示時期としては、会計年度の決算短信は遅くとも決算期末後45日以内に開示を行うことが適当とされ、30日以内の開示がより望ましいものとされています。
決算短信は、上場企業のホームページの他、金融庁の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)、東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で閲覧することができます。
<有価証券報告書>
有価証券報告書は、株式などを発行している上場企業が、自社の企業概況や経営状況をまとめた書類で、株式市場の公正化と投資家の保護を目的に、事業年度終了後3カ月以内に報告書を提出することが金融商品取引法に定められています。
決算短信と有価証券報告書は、いずれも上場会社の決算情報が開示される資料という点では共通していますが、以下のような違いがあります。
- 一般的に、決算短信は速報性が重視され、有価証券報告書は網羅性や内容の詳しさが重視される。
- 決算短信は証券取引所の規程に基づく開示資料であるのに対して、有価証券報告書は金融商品取引法により作成が義務付けられた法定開示資料である。
- 決算短信は公認会計士による会計監査の対象ではないが、有価証券報告書は公認会計士による会計監査の対象となっている。
<決算公告>
決算公告とは株式会社が決算を公の場で告知することを指し、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならないと、会社法において定められています。
<統合報告書>
統合報告書とは、財務情報に加えて、企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産などの非財務情報を統合し、投資家や世間に向けてアピールするための資料で、企業理念、価値創造ストーリー、事業戦略なども記載されています。同様の開示資料を表す用語としてアニュアルレポートがあり、同義語として使用される場合もありますが、アニュアルレポートが単年度の報告を主とするのに対して、統合報告書では、より長期的・包括的な視点で企業が目指すべき姿とその実現に向けた企業価値創造ストーリーが重視されます。
<アカウンタビリティ>
アカウンタビリティ(accountability)とは、アカウント(account:会計)とレスポンシビリティ(responsibility:責任)を組み合わせた言葉で、経営者が、株主・投資家・従業員などのステークホルダー(利害関係者)に対して、企業の状況や財務内容を報告する義務のことを指します。
<IR:Investor Relations>
企業が経営、財務状況や株主優待制度など、投資の判断に必要な投資指標を株主や投資家に対して提供する活動のことを言います。投資家向け情報として、多くの企業がIRサイトを公開し、業績動向、経営者の理念や株主還元の姿勢などの情報を発信しています。
決算説明会や投資家やアナリスト向けの説明会の他、工場や施設などの見学会の実施も広義においてIR活動の一環と言えます。