SPC(特別目的会社)
SPC(特別目的会社)とは何か?
SPCとはSpecial Purpose Companyの略で、日本語では特別目的会社と訳されています。名称の通り、特定の事業を目的に、資産の流動化に関する法律(SPC法)に基づいて設立できる法人で、多くの場合、企業が保有する不動産の証券化などによって資金を調達することを目的に設立されます。
また、SPCは税務上の観点から利用される場合もあり、実際に多くの企業が、タックスヘイブン(※)と呼ばれる国や地域に特別目的会社を設立することで税額を抑制しています。日本でもSPCに対する課税は低く抑えられています。そうすることで、SPCからの直接的な税収は減りますが、出資者の配当金収入に対して、所得税が発生することになります。
※タックスヘイブン:租税回避地のことで、法人税が免除されたり低率であったりする地域や国を指し、代表的なものとしてバミューダ諸島やケイマン諸島、シンガポールなどがあります。
不動産の証券化とは何か
不動産の証券化とは、土地や建物などの不動産から生じる賃料や売却益を原資として、社債や株式などの証券を発行し、多くの投資家からの出資を募ることをいいます。不動産を売却や賃貸することでも資金の調達は可能ですが、その不動産に対する所有権や使用権を手放すことになりますが、不動産を所有する企業がSPCを設立して自社が保有する資産をSPCに売却し、SPCが不動産の信用を担保に資金調達を行うことで、親会社は不動産に関する権利を失うことなく、まとまった資金を調達することが可能になります。
SPCのメリットは何か
SPCの主なメリットとして以下のようなものが上げられます。
<資金調達のしやすさ>
前述の通り、保有している資産を活用して資金を調達する際に、SPCを活用して小口に証券化することで。幅広い投資家から出資を受けることが可能になります。
<財務体質の改善>
財務体質を改善するために特別目的会社(SPC)を利用する場合もあります。
財務体質を改善させるには、不動産などの資産の売却や、新株の発行などが考えられますが、不動産の売却には時間がかかり、かつ利用権が失われます。新株の発行も既存株主の反発を招く恐れがあります。
SPCを利用して資金を調達すれば、株主の反発を招くことなく、当該不動産の使用権を維持したまま、負債を削減することができます。
<投資家の投資リスクの軽減>
投資家が出資の対象としているSPCの保有資産は、親会社の信用状態が変化しても影響を受けることはないため、投資家にとっても投資リスクの軽減というメリットがあります。
<M&Aのレバレッジドバイアウト(※)への活用>
M&Aの買収資金の調達にレバレッジドバイアウトの手法を用いる際に、SPCを設立し、売却先の資金を担保に資金を調達することができます。
※レバレッジドバイアウト(LBO):M&Aで買収資金を調達する際に、M&A対象会社の資産価値や将来の収益性を担保に資金を調達する方法。少ない資金で、相対的に大きな資本の企業を買収できることから、てこの原理(レバレッジ)になぞらえてレバレッジドバイアウトと呼ばれます。
SPCのデメリットは何か
SPCには多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
<コストがかかる>
SPCの設立は通常の株式会社よりも資本金が多く必要であり、設立の手続きにかかる作業コストも余分にかかります。また、保有資産から得た利益の一部は出資者へ配分することが前提となっているため、その部分もコストを言えます。
<悪用されるリスクがある>
SPCは、特定の資産を会社本体から切り離しができるため、過去にはSPCを悪用した粉飾決算が行われた事例もあります。現在では実質的に支配関係にある特別目的会社は、本社と連結していなければならないなどの法改正が行われていますが、それでも特別目的会社には悪用できる余地があるため、SPCを設立する場合は、コーポレートガバナンスを徹底するなど、運用には注意が必要です。
<M&Aの買収対象の企業に債務が残る>
SPCを利用してレバレッジド・バイアウト(LBO)でM&Aの資金を調達すると、買収される側の企業に多額の債務が残る場合があります。
SPCにはどんな種類があるか
SPCには仕組み(スキーム)の違いによって、大きく
・GK-TK(合同会社匿名組合)
・TMK(特定目的会社)
の2つの種類があります。
<GK-TK>
SPCを利用する際に最も多く用いられるスキーム であり、海外投資家が日本国内に投資する際にも活用されています。
匿名組合員(出資者)からの出資と金融機関からの融資で資金を集め、親会社から不動産や信託受益権を取得し、取得した資産で得た利益を匿名組合員に分配し、金融機関への返済を行います。
SPCを利用する際に最も多く用いられるスキームで、海外投資家が日本国内に投資する際にも活用されています。
<TMK>
特定目的会社(TMK)を利用した投資スキームのことで、特定目的会社(TMK)が投資家から資金を集めて不動産や信託受益権などを取得し、これらの資産から得た利益で投資家に配当を支払ったり、金融機関からの借り入れを返済したりします。
TMKスキームでは、証券化の際に資産流動化計画を財務局に届け出る必要があります。
計画を変更したい場合などは社員総会の開催が必要であり、取得資産を勝手に変更することはできないといった制限はありますが、特定目的会社が取得できる資産には制限がなく、キャッシュフローを獲得できるものであれば、原則としてどのようなものであってもTMKを使ったスキームを利用することが可能です。