移転価格税制
移転価格税制とは何か?
関係会社間取引が国をまたがる場合(例.日本の親会社とUS子会社との取引)の取引価格を移転価格と言います。国をまたがる取引では国際的な利益移転が生じ、各国で納める税金が大きく変わってきます。移転価格税制とは、海外のグループ会社との取引を通じた利益の移転を防止し、自国の税収確保を目的とする制度で、日本はもとより多くの国において制度が設けられています。
「○○社、海外子会社との取引でXX億円申告漏れ」というニュースを新聞記事やネットニュースで目にすることがありますが、これは日本の親会社(もしくは国内グループ会社)と海外子会社との間の取引価格の妥当性に移転価格税制が適用されたことによるもので、時には100億円を超えるような事案もあります。
昨今の企業側のビジネスの変化に対応して各国の税務当局による規制がより厳格化しており、OECDでは参加国が協調して新たなルール作りに取り組んでいます。
移転価格税制の仕組み
移転価格税制では、国内企業と海外のグループ会社との取引が、独立した企業間で通常設定される取引価格(独立企業間価格)で行ったときと比べて利益が減少する場合に、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして所得を計算して課税します。
例えば、日本の親会社が、通常価格50万円の商品をUSの販売会社に40万円で輸出した場合、通常取引と比べて日本で計上されるべき利益が10万円減少し、USで計上される利益が10万円増加することになるため、この取引に対して税務当局が不当に安く輸出していると判断された場合に移転価格税制を適用し、50万円で輸出したと見做して計算した所得に対して課税することになります。
逆に通常価格より高い取引価格で輸出した場合は、今度はUSの税務当局から移転価格税制を適用される可能性があります。
近年の経済活動のグローバル化に伴い、国際的取引が増加し、取引内容が複雑になったことを踏まえ、OECDでは国際的な二重課税を排除し公正な移転価格税制の適用を図ることを目的とした移転価格ガイドラインを作成しています。タックスヘイブンにつくる実態のない子会社の所得にも、親会社のある本国から課税できるなどの内容が盛り込まれています。日本でも独立企業間価格の算定において、OECD移転価格ガイドラインで国際的に認められた方法に沿った計算方法を定めています。
二重課税と相互協議
移転価格税制は通常取引よりも利益が減少していると判断された国において適用されるため、課税を受けた場合、グループ全体でみると二重課税となります。前述の日本からUSへの輸出の例で言えば、日本で通常取引よりも利益が減少していると見做された部分に追加で課税されますが、USで利益が増加している部分の税金が還付されることは、通常はありません。
しかし、この二重課税を回避する方法として“相互協議”という制度があります。相互協議とは、租税条約の規定に基づく、日本の権限ある当局と相手国の権限ある当局との協議で、国際的二重課税等の租税条約の理念に反する課税を排除するために定められた制度です。
この相互協議の制度を利用することで、二重課税を回避できる可能性がありますが、相互協議は政府間協議であるため、納税者は直接協議には参加できません。また、租税条約を締結していない国とは行うことはできないので、注意が必要です。
グローバルタックスマネジメント
移転価格税制に適切に対応するためには、グループ各社が個別に税法やルールを遵守するだけでは不十分であり、親会社が主導して、グループ全体の税務リスクを適切に管理し、税務コストを最適化する“グローバルタックスマネジメント“が重要です。グローバルにビジネスを展開する欧米の先進企業では、国際税務のスペシャリストで構成されたグローバルタックスマネジメントの専門組織をCFO配下に設置している企業は少なくありません。
一方、日本企業で税務といえば、利益が確定した後の事後処理的な位置づけで、各法人が正確な税務申告を行うことに重きがおかれていました。一部の企業では国際的なM&Aの増加等もあり、税理士法人出身者の採用や人員増など、税務部門を強化する動きがみられますが、組織の強化だけでは個別事案への対応能力は強化されても、グローバルレベルでグループ全体をマネジメントするには限界があります。
前述の欧米の先進企業では、ERPシステムの拡張やグループ会社間取引のプラットフォームなど、会社間取引の可視化と税務に関する情報を一元管理するために必要なデジタルテクノロジーに投資を行い、グローバルタックスマネジメントの専門組織がその機能を十分発揮できる環境を構築しています。
BlackLineの会社間取引管理
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