ダスキン経理部が進める業務変革とDX推進
「BeyondTheBlack TOKYO 2023」レポート
2023年8月23日・24日の二日間にわたり、ブラックライン株式会社主催による「BeyondTheBlack TOKYO 2023」を開催いたしました。今回のテーマは「ファイナンス×人的資本経営」で、非常に多くのお客様にご参加いただきました。本ブログでは、その一部をレポートさせていただきます。
コロナ禍が露呈させた経理実務遂行の課題、AI等の発達による技術革新がもたらす働き方改革や人材確保等、急速に変わる時代背景に対応すべくダスキン経理部の将来のあるべき姿と実現のために取り組むDX推進のあり方が紹介されました。
ダスキンは1963年の設立から60年、創業者が提唱した「社会価値向上」と「経済価値向上」の双方を実現する祈りの経営“道と経済の合一”という、現在のCSV経営に近い経営理念を基軸としています。財務会計上の連結売上高は約1700億円で、清掃・衛生用品のレンタル・販売や役務サービスを提供する訪販グループとミスタードーナツを主軸とする飲食業のフードグループが主要な事業セグメントです。
同社は、サービス業全体における慢性的な人員不足という課題に直面しつつ、経理業務のオペレーション業務の効率化への取り組みが進行中です。同社の執行役員 総務部担当兼経理部長の塚本氏は、「アウトプットの価値と企業価値向上が比例しない業務は、業務のあり方自体を考え直し、IT技術への置き換え、アウトソースも視野にいれて考えていく必要がある」と語ります。
以前のコーポレート部門は、オペレーション業務のウェートが高すぎるという課題があったと塚本氏。その解決のため高度な専門性を持つCoE(Center of Excellence)の機能、事業を分けて支えるサポートとしてのBP(Business Partner)、オペレーションを目指していくOPE(Operational Excellence)といった三つのカテゴリーに注力してきたといいます。
そのコーポレート部門が近年、機能の高度化を求められる一方、社内共通業務は、標準化と業務の集約が喫緊の課題となっており、決算業務においてもグループ全体での効率化が求められるようになりました。塚本氏は、全社の業務効率化実現においては、コーポレート部門の「全社横断的な機能強化」の必要性を強調します。
「業務の標準化については、広くその業務で使われている仕組みを取り入れることが一番近道との観点から、BlackLineを導入しました。この製品によって体系立てられたデータを戦略資産として活用する方針です。」(塚本氏)
業務最適化の議論においては、シェアードサービス化やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の検討がなされてきました。しかし、「これが正解というものはない」と塚本氏は語ります。
「大上段からのDX戦略ではなく、個々の業務フローの最適化への取り組みが、結果的に今日のDXにつながった」というのが塚本氏の提言です。
ダスキンの会計DXまでの道のり
次に同社経理部 部長補佐の麻野氏が、ダスキンの会計DXの変遷を紹介しました。
2004年に上場を目指すプロジェクトがスタートし上場基準を満たす連結決算の仕組みをオンプレミスの会計システムで構築しました。高度なシステムではあるものの現状も膨大なコストが発生しております。2018年、会計システム変革のプロジェクトがスタートし、オンプレミスシステムから脱却しグローバルでスタンダードなシステムに業務を合わせることを最優先課題とし第1フェーズで経費精算システムのクラウド化に取り組みました。当初は半年程度での運用開始を見込んでおりましたが、新たなワークフローへの抵抗が大きく導入が遅れておりました。そのような中、コロナ禍によって業務のリモート化への対応が急務化し2020年の夏、経費精算システムの導入が完了しました。
「コロナ禍での働き方の変化がシステムに業務を合わせるチャンスと捉え、業務展開の新たなフェーズが加速し経費の支払いシステムへの展開を計画していた同時期にシェアードサービスセンターも設立され業務の集約化が新たな課題となりました。」(麻野氏)
第3フェーズにはいり、2022年の6月にBlackLineの導入が決定し、テスト運用開始まではわずか4ヵ月、2022年3月期決算で本稼働が実現しています。
「2022年7月に始まった本プロジェクトは、当初の計画通り、テスト運用から数ヵ月で本稼働にこぎつけ成功を収めました。このシステムの特徴は、経理部のメンバーだけで導入から運用まで完了できたことです。従来のシステム導入の際には、情報システム部のスペシャリストの協力が不可欠でしたが、ブラックラインはそのような依存性が少なかったことが理由です。」(麻野氏)
BlackLine導入による決算業務と各システムの「横串」によって、今後はさらにデータ活用が期待されていると麻野氏は展望を語ります。また、一元管理による決算業務の効率化が実現し、決算業務の可視化と進捗管理が容易になりました。大きな方針としては、オペレーション機能の向上と人手からIT技術への置換が進行中です。
「変革はまだ途上ではありますが、リモート決算とリモート監査を完全に実現したいと考えています。監査法人とのリアルタイムな情報共有が容易になったため、決算の早期化の可能性が期待され、この仕組みの全社化を進め関係会社にも展開していく計画です。」(麻野氏)