経理財務シェアードサービスの課題と成功のポイント
経理財務シェアードサービスの課題と成功のポイント
~既存システムを残したまま標準化を進めるには~
<目次>
・今、シェアードサービスが注目される理由
・標準化が進まないシェアードサービスの実情
・シェアードサービス成功の土台となる「標準化」を進めるポイント
・既存の会計システムを残したまま標準化を進めるには
・海外のシェアードサービス先進事例の共通点
・最後に
今、シェアードサービスが注目される理由
シェアードサービスとは、グループ企業において複数の企業・組織に散在する共通業務を標準化し、一つの部門や子会社に集約することで効率化やノウハウの蓄積を図る手法で、2000年代前半に日本企業がそれまでの本社重視の経営から連結経営の強化へと舵を切る中、多くの企業がその導入を本格的に検討し、一定数の企業がシェアードサービスセンターを立ち上げました。
その後、J-SOXやIFRS/コンバージェンスなどが企業経理のメイントピックスとなる中でシェアードサービスという言葉を目にする機会も減っていましたが、VUCAと言われる予測困難な時代に突入し、多くの企業が変革を求められる中で、経理財務部門の変革の手段としてシェアードサービスが再注目されるようになりました。
標準化が進まないシェアードサービスの実情
しかし、すでにシェアードサービスを導入している企業に話を伺うと、人と業務は集約したものの標準化が思うように進まず、当初の目的を十分に達成しているとはいえない企業は少なくありません。
なぜ標準化が進まないのか、現場の課題を業務特性とシステムの2つの点でまとめました。
<業務特性>
- 高い専門性が求められる業務が多く、人が固定化しやすい
- スピードと精度の両立のため、職人技に依存しやすい
- 関係各所とのコミュニケーションが多い
- 紙の資料や押印作業が多く残っている
- 必要な情報がいろいろな形でいろいろな場所に散在している(キャビネ、共有サーバ、ローカルPC、前任者の記憶、等)
- 現業をこなすのに精一杯で、標準化に取組む余裕が現場にない
<システム>
- シェアド対象会社の事業特性や企業規模がさまざまで、会計システムの一本化が難しい
- M&A等によるシェアド対象会社の拡大に、システムの共通化が追い付かない
シェアードサービスの成功の土台となる「標準化」を進めるポイント
業務を集約しただけではシェアードサービスで成果を上げることはできません。業務の効率化だけでなく、高度化を果たす上でも標準化は必須です。
シェアードサービスの成功の土台となる標準化を進めるためのポイントは以下の通りです。
1)自己流を減らす
情報をまとめるプロセス(業務手順や手続き)は共通化し、情報の活かし方に職人技(個々人の強み、経験の蓄積や創意工夫)を発揮する。
2)情報へのアクセシビリティを高める
- 現在や過去の数値データに加えて関連ドキュメントや経緯に関する情報も共有する
- ペーパーレスは必須だが、単なる電子化ではなく、仕訳データや業務ログと関連ドキュメントを紐づけた形で一元管理する
3)コミュニケーションコストの削減
2に加えて、業務プロセスのデジタル化やワークフローなどで、業務の進捗状況やコミュニケーションの内容を可視化することで、組織内や監査人等の外部を含めた関係者間でのコミュニケーションにかかるコストを削減する。
4)マニュアル作業は可能な限り自動化を進める
つぎはぎの自動化によるブラックボックス化とプロセスの固定化を防ぐために、全体最
適と内部統制(自動化プロセスの可視化と保守性)を考慮した自動化を進める。
5)業務基盤を可能な限り統一する
- 会計システムはなるべく共通化し、一本化が困難でも、会計システムの数を減らす
- 決算業務をデジタル化するシステムと会計システムを組み合わせることで、会計システムが複数存在したままでオペレーションの基盤を共通化する
既存の会計システムを残したまま標準化を進めるには
前述の経理業務をデジタル化するプラットフォームは、決算を中心とした経理オペレーションの標準化を促進するソリューションとして欧米企業の間では広く浸透し、BlackLineはこの領域においてグローバル№1の実績を持つクラウドサービスとして、シェアードサービスの土台となる標準化を進めるために必要な機能が用意されています。
そして、シェアードサービスの目的達成のハードルを下げる上でBlackLineが最もお役に立てるポイントのひとつが「既存のERPや会計システムと組み合わせて使う」というシステムアーキテクチャーです。
BlackLineは既存のERPや会計システムが複数種類あっても、それらのシステムと柔軟に連携し、各社のシステムに大きく手を入れることなく共通のオペレーション基盤を構築することができます。
さらに、Blacklineの各モジュールの機能には売掛金の入金消込や検収照合、日常の経理業務における仕訳入力の電子化や自動化/半自動化など、決算以外の業務の標準化や自動化に資するポイントがいくつかあります。詳細についてはそれぞれに深堀したブログ記事がありますので、ぜひご一読下さい。
<関連ブログ>
・今、あえて「伝票入力」を考える~令和に求められる伝票入力の要件と未来
・欧米と乖離ある明細突合-入金消込の自動化率を下げる日本固有の課題
・連結システムと何が違うのか?BlackLineで連結業務が変わる3つのポイント
海外のシェアードサービス先進事例の共通点
P&GやBASF、SAPなど、グローバルにビジネスを展開する欧米企業の多くがシェアードサービスをグループ経営の戦略的インフラと位置付け、業務の標準化とシステムの共通化をグローバルレベルで進めてきました。それは、欧米企業だからといってトップダウンで容易に実現できたということでは決してなく、長い時間とエネルギーをかけて現在の形となり、そして、今も進化を続けています。シェアードサービスはその時間とエネルギーに見合う価値がある経営手法であると考えられています。
そうした先進企業の取り組みを見ると、その内容やスタンスには以下のような共通点があるように思います。
1)進化する標準化
標準化はシェアードサービス成功の土台ですが、単に共通化して終わりではなく、標準化されたプロセスをさらに洗練されたものにし、標準化の範囲の拡大を常に探る「進化する標準化」を常に追求しています。
2)CoE(Center of Excellence)/プロセスオーナーとしての役割
業務プロセスをシンプルにして付加価値の高い業務へリソースをシフトすると同時に、新しく標準化された業務プロセスをグローバルにロールアウトすることもシェアードサービスセンターの役割です。シェアードサービスで仕事をする人たちは単なるオペレーターではなく、標準化や統制をグループに対して推進するプロフェッショナルとして位置付けられています。
3)人への投資、システムへの投資
改善/改革の取組みを長い年月、継続させてきたからこそ今の形がありますが、その取り組みをシェアードサービス会社任せではなく、グループ全体で、特に大きな財布と権限を持っている本社が当事者意識を持って協力し、サポートしています。
最後に
シェアードサービスの導入を検討している方も、思うように標準化が進まないシェアードサービス会社の方も、道のりは遠いと思われるかもしれません。たしかに、会計システムの統一は望ましいことですが、業務の標準化を進めるために会計システムをERPなどで一本化しなければならにという高いハードルはもはやありません。
BlackLineには複数の会計システムと組み合わせて使うことができる柔軟なアーキテクチャーと、業務の標準化を促進するソリューションがあります。実現に向けたロードマップの作成と推進をお手伝いするパートナーや、先人の経験からの学びがあります。経理財務のシェアードサービスにこそBlackLine。BlackLineを知れば知るほど、その想いは強くなります。
オンデマンドでご覧頂ける、シェアードサービスの推進方法等について解説動画もご用意しておりますので合わせてぜひご覧ください。
<ライター>