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財務・会計用語集

PMI(Post Merger Integration)


PMI(Post Merger Integration)とは何か

PMIとはM&A成立後の経営統合プロセスのことで、具体的には新しい経営体制の構築、経営ビジョン実現のための計画策定、業務オペレーションの整備、ITシステムの統合などを指します。M&Aによる統合後は企業全体が混乱しがちです。統合の準備が不十分な場合、業務上の重大なミスやシステム障害などが発生し、顧客離れや優秀な社員の離職、業績悪化、内部対立の顕在化などを招き、M&Aが企業の成長力を損なう可能性が高くなります。

M&Aというと買収完了までのプロセスが注目されがちですが、PMIは“M&Aの成否の鍵を握る”といっても過言ではない重要なプロセスです。

PMIでは何が統合されるのか

一般的にPMIでは以下のような領域で統合が進められます

<経営管理体制>
まず、両社の経営ビジョンや、経営戦略などをすり合わせ、具体的な経営層の構成や会議体、業績管理の方法などを詰めていきます。

<経理財務>
経理財務の統合は、適切な経営判断を行うために、また、上場企業であれば、法人としての責務を果たす上で重要なポイントです。具体的には以下のような領域において、業務プロセスやルール、仕組みを早急に取り組む必要があります。

  • 日常の経理業務
  • 決算プロセス(単体、連結)
  • 資金管理
  • 管理会計
  • 内部統制


<人事、労務>
双方の人事制度を確認し、整備します。また、買収された企業では労働条件の変更や人員整理が必要になるケースは少なくありません。人事制度の整備も経理財務と同様、早急に取り組む必要がありますが、労働条件の変更や人員整理は、いずれも労働者との合意が必要であり、慎重に進めることが大切です。

<業務オペレーション>
統合後の業務フローを作成します。大小さまざまな変化が現場に求められるため、拙速に進めるのではなく、「なぜ変化が必要なのか」「変化によってどんな成果が得られるのか」を浸透させた上で変革に着手することで、結果的には効率的かつ効果的に統合を進めることが可能になります。

<ITシステム>
ITシステムも業務オペレーションと同様(一体)です。また、ITシステムをどちらかに寄せるのではなく、刷新する方法も考えられます。どのパターンにせよ、システムを使う“人”の意識改革なし、統合で大きな成果を得ること容易ではありません。

<企業文化>
企業文化はその企業が歩んだ歴史によって培われた会社としての考え方や行動する上での判断基準、その企業から感じ取れるイメージなどと考えられており、企業理念やビジョン、行動指針が社員間で根付き、共通の価値観を基に行動している企業は企業文化があると言われます。
他の領域と異なり、企業文化は融合させるものではなく、お互いの企業文化や仕事の進め方などを理解し合い、どちらかの仕事の進め方を押し付けるのではなく、時間はかかるかもしれませんが、お互いを融合させた新たなビジョンや方針、仕事の進め方などを構築することで、単にM&A後の混乱を最小化するだけでなく、大きなシナジー効果が生まれることが期待されます。

PMIで注意すべきポイント

PMIで注意すべきポイントの主なものとして以下の3つがあります。

<買収側企業のやり方の押し付けはNG>
買収する企業は買収される側よりも業績が良いケースが多いこともあり、買収側の業務プロセスが優れていると認識されがちです。しかし、買収する側、される側、それぞれの企業(事業)に歴史があり、その歩みによって培われた文化や仕事の進め方があります。双方の相互理解なしに強引に仕事の進め方を押し付けると、買収される側の反発を招きます。十分なコミュニケーションをとり、なぜそれを行う必要があるのか。変わることでどのようなメリットがあるのかを相手に伝えた上で、業務プロセスを融合させることが大切です。
また、海外企業の買収ではERPで全社の基幹プロセスが統合されているなど、相手側の方が優れた部分を多く持っている場合も少なくありません。一方的に買収側のやり方を押し付けるのではなく、互いの優れたポイントを認め合うことも重要です。

<焦りは禁物>
M&Aは大きな資金を要するため、成否の判断の要素として投資の回収や資本効率が重要視されます。上場企業であれば株主への説明責任がありますし、非上場企業の場合でも融資を受けた銀行などの債権者に対する返済責任もあります。
しかし、改革を焦ってはいけません。PMIでは経営の仕組みや組織、人事や労務などの規則、ITシステムなど幅広い分野での統合が進められますが、その土台となるが従業員の意識改革と企業文化の融合です。この土台を固めることは容易ではありませんが、土台を固めることを重視し、丁寧に対策を進めることで、他の領域の統合を円滑に進めることが可能となります。

<尊重はしても遠慮はしない>
相手を尊重することは当然重要ですが、M&Aを成功させるためには、互いの解決すべき課題について話し合い、協力しながら対策を進める必要があります。過去の海外企業の買収では治外法権のようになっているケースも散見されましたが、仮にM&A後の混乱は最小化できたとしても、単に1+1が2になっただけではM&Aに大きな労力をかける意味がありません。上から目線で一方的に変革を押し付けるのではなく、また、相手を尊重し過ぎて放任するのでもなく、対処すべき課題や共通化すべきポイントを明確にし、対策を実行するスケジュールの確認やリソースの供出を相互に行うことが必要です。

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