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財務・会計用語集

増減分析


増減分析とは何か?

増減分析とは、異なる会計期間の勘定科目の残高を比較して重要性の高い増減を特定し、分析するための会計手法で、企業の財務情報に対する分析方法のひとつとして用いられます。

増減分析は通常、当期末残高と前期末残高を比較して、増減幅や増減の理由を確認します。

増減分析は、異なる会計期間の期末残高を比較して、同じ勘定科目の「水平な時間軸」あるいは「水平的」な増減を分析するため、水平分析とも呼ばれます。

一方、財務諸表内の勘定科目(もしくは勘定科目のグループ)の残高を別の勘定科目(もしくは勘定科目のグループ)の残高と比較して、パーセンテージで表示して分析する手法のことを垂直分析と言います。例えば、総資産残高と自己資本の残高を比較する自己資本比率や、売上高と販売費を比較する売上高販売費比率などがあります。

また、増減分析と似た概念として差異分析という言葉があります。差異分析は主に予算や予測値と実績を比較し、その差異を分析することを指しますが、広く勘定残高の増減分析も含めて使われることがあります。

増減分析はいつ行われるか

増減分析は決算や会計監査、経営分析など、様々な場面で行われます。

損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を含む様々な種類の財務諸表に対して、増減分析を行い、財務諸表の数値だけでなく、各種の財務指標に対しても増減分析を行うことができます。

決算や会計監査においては、現預金や借入金、固定資産、販売費および一般管理費など、あらゆる項目が増減分析の対象となります。一方、経営分析においてはキャッシュフローや損益への影響が大きい項目が分析の対象として重視されます。

増減分析の実施方法

増減分析は、次の手順に従って実施されます。

  1. 分析対象の勘定科目の前期末残高と当期末残高を比較し、差額と差異率を把握する。
  2. 内訳(セグメント別の残高と増減)を把握する。どの切り口で内訳を把握するかは勘定科目によって異なります。例えば、現預金であれば銀行別口座別、売掛金や買掛金であれば取引先別、売上高であれば顧客別や地域別、事業別など、様々です。
  3. 個々のセグメントでの増減理由を確認する。
  4. 企業の業績や関連する他の勘定科目の残高や増減などから、増減の理由や妥当性を確認する。例えば、売掛金の場合、年間での売上高が減少していても、例年以上に期末月に売上が集中すると、売掛金の期末残高は大きくなります。

以下は売掛金の増減分析の具体例です。

①当期末残高と前期末残高を比較し、増減額と増減率を確認
売掛金の当期末の残高が12億円、前期末の残高が10億円で、2億円(20%)増加

②得意先別の内訳を確認
・A社 260百万円(前期)→ 320百万円(当期) 060百万円 23% 増加
・B社 300百万円( 〃 )→ 250百万円( 〃 ) 050百万円 17% 減少
・C社 140百万円( 〃 )→ 310百万円( 〃 ) 170百万円 121% 増加
・D社 190百万円( 〃 )→ 200百万円( 〃 ) 010百万円 5% 増加
・他 110百万円( 〃 )→ 120百万円( 〃 ) 010百万円 9% 増加

③売掛金の増減額が大きいA社~C社の3社について増減の理由を確認
・A社 060百万円 23% 増加 A社への売上増加のため
・B社 050百万円 17% 減少 B社への売上は微増で売掛金減少と矛盾、要調査
・C社 170百万円 121% 増加 C社への売上の大幅増加のため

④B社について売掛金残高の減少理由を調査
前期にB社の売掛金の回収遅延が発生し、前期末のB社の売掛金残高が通常よりも多い状況にあったことが判明。改善処置もすでに施していることを確認。

増減分析は前期末残高と当期末残高の増減金額や増減率のほか、1年間を通じて月次での増減を比較・分析することで、増減のトレンドやパターンを確認することもできます。この種の増減分析では、比較対象の年(基準年度)の期末残高を100%とし、連続する各期間の残高の、基準年度の残高に対する割合を算出することで、中長期的なトレンドを把握することができます。これを対基準年度比率と言い、主に成長性を分析する際に用いられます。

勘定残高が増減する理由は様々で、勘定科目によってもその内容は大きく異なります。

原材料価格の高騰による調達の増加、競争激化による販売価格の変更、景気動向による需要の増減など、外的要因や経営面での重要な変化が原因で大きな変動が生じることもありますが、経理処理の誤りによって生じる場合もあります。

増減分析はなぜ重要か

増減分析は、企業の経営層に加えて、金融機関や投資家などのステークホルダーに貴重な洞察を提供します。

企業は、増減分析によって前期からの想定外の重要な変動の有無を確認し、説明することができます。また、会計処理の誤りを発見する場合もあります。

増減分析を通じて予算や予測の作成時の見込み違いを明らかにし、今後の予算を立てる際に参考にすることもできます。

企業の業績を評価する経営層や投資家は、増減分析を使って成長のパターンを確認することができます。

企業監査における増減分析

会計監査というと証憑突合や記録や文書の閲覧など、事務手続のチェック屋というイメージが強いですが、監査時間の中で、すべての取引をチェックすることは難しく、また、サンプルテストにのみ依存する形で財務諸表に対する信頼性を検証することは不可能です。そこで、増減分析などの様々な分析を駆使して財務諸表に潜む不正や誤謬のリスクを効率的に検知しており、分析的手続の良し悪しが監査品質や業務の効率性に非常に大きな影響を及ぼすとも言われています。

※関連ブログ:財務諸表の信頼性を高める「差異分析(増減分析)」とは
※監査関連動画:BlackLine機能紹介動画 <監査対応編>

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