給与の勘定照合
勘定照合とは?
勘定照合とは、ある勘定の情報が正確、かつ精密であるかを確認するプロセスです。照合とは、同一の財務取引に対する2種類の異なる参照情報を比較することを指し、勘定照合では、特定の企業の財務情報にこのプロセスを適用します。
勘定取引を照合するために、経理担当者は取引の詳細を、銀行や仕入先などの外部ソースから入手した請求書、領収書、取引明細などが含まれた文書と比較します。勘定照合は、企業の財務記録の有効性を保証する重要なプロセスとして多くのメリットがあり、企業が以下を行うために活用できます。
・データの入力ミスを発見する
・銀行の取引、手数料、利子のタイミングのずれを修正する
・企業が作成した財務諸表の正確性と有効性を保証する
・不正を発見する
・金融規制を遵守する
・納税申告の準備を適切に行う
給与の勘定照合とは何か?
給与の勘定照合は、企業の従業員への報酬を裏づける記録や情報が正確であることを検証する処理です。給与は従業員の労働に対する報酬ですが、給与に関連する勘定科目としては以下のようなものがあります。
・給与手当:従業員に対する賃金、家族手当、住宅手当、残業手当、出張手当、資格手当など
・法定福利費:社会保険料、労働保険料、介護保険料、雇用保険料、健康保険料(会社負担分)、厚生年金保険料(会社負担分)、労災保険料など
・福利厚生費:社員旅行や健康診断の費用、結婚祝い、出産祝い、慶弔見舞金など
・賞与:従業員賞与、特別賞与や奨励金やなど
・役員報酬:取締役や監査役に対する報酬など
・退職金:従業員退職金、役員退職慰労金など
給与に関わる全ての取引が正しく計上されているか確認するために、企業は給与勘定の照合を行います。全ての給与記録は、賃金給料支払簿と呼ばれる集約的な記録簿に保存され、照合では、賃金給料支払簿のデータを補助文書と比較して、正確かどうか検証します。
給与の勘定照合は、従業員が期日通りに正確な額の支払を受けているか確認すると同時に、企業の全体的な目標や目的を支えるものでもあります。給与の勘定照合のデータは、他の財務情報とともに、企業の健全性と経営状況を反映する財務諸表の作成に使用されます。このデータは、納税申告や法令遵守にも役立ちます。
給与の勘定照合の方法は?
給与計算に関して日本では労働基準法で賃金台帳の作成を保管が義務付けられており、台帳には以下のような情報が記録されています。
・氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外・休日・深夜労働時間数
・基本給や手当の種類およびその額
・控除内容とその額
一般的に給与や関連項目の計算は、給与計算用に自社開発したシステムや、ERPの人事管理モジュール、人事関連のクラウドサービスを使って行われており、賃金台帳もそれらの給与計算システムで作成され、その計算結果が会計システムに入力され、給与関連の各勘定科目が計上されます。
したがって、給与の勘定照合では会計帳簿に記録されている給与関連の勘定科目の金額と、賃金台帳の支給額と控除額の各項目の金額を比較します。
賃金台帳と同じよう書類として給与明細があり、記載内容はほぼ同じですが、賃金台帳が従業員への給与支払を管理するために法律で作成と保存が義務付けられているのに対し、給与明細は従業員に給与支払を通知することを目的に作成され、保存も義務付けられていません。実務上はどちらを使用しても支障はありませんが、監査などで第三者に対して給与勘定と賃金台帳が一致していることを証明できるようにしておくことが大切です。