キャッシュポジション
キャッシュポジションとは?
事業運営におけるキャッシュポジションとは、特定の時点において企業が保有する現金と流動性預金(普通預金、当座預金、通知預金)および短期所有の有価証券の合計を言います。
企業は事業を運営するために、手元にある資金と収入と支出を日々管理し、資金が不足することがないように調整しています。これを資金繰りと言いますが、もし資金繰りがうまくいかなければ、手元に資金が不足して取引先への支払いができなくなったり、従業員への給与が支給できなくなったり、最悪の場合は、倒産する可能性もあります。そうした事態を回避するために、つねに資金繰りを健全に保つことが重要であり、キャッシュポジションが高い企業は資金繰りに余裕がある、財務上、安全な状態にあると言えます。
なお、投資の世界でキャッシュポジションというと、投資資金の中で手もとに残しておく現金のこと(もしくは、その保有割合)を言い、安定した投資活動を行うために、投資で予測されるリスクや投資資金に備えることを主な目的にしています。
キャッシュポジションを高めるには
キャッシュポジションを高めるには短期的な施策と長期的な施策があり、短期的な施策としては以下のようなものがあげられます。
・金融機関からの借入
・売上債権のファクタリング会社への売却
・経費削減
・資金化されていない資産(未回収の売掛金、保有する必要性の低い有価証券、不必要な固定資産等)の整理、売却
・株主や投資家からの出資を受ける
長期的な施策としては以下のようなものがあげられます。
・売上を上げる
・粗利益率を上げる
・固定費を削減する
短期的な施策の実施には金利や債権売却時の手数料などのコストを伴うものがあり、また、拙速な経費削減は現場のモチベーション低下を招く可能性もあり、長期的な施策によって安定的に高いキャッシュポジションを維持できる事業体質を構築するのが望ましいことは言うまでもありません。
キャッシュポジションが高ければ高いほど、安全性という観点では望ましいですが、投資家から見れば、企業が資金を効率的に経営に活かしていないと見なされるため、企業は日々の運転資金の安定的な確保と研究開発や事業買収などの成長投資とのバランスを見ながら、適正なキャッシュポジションを保つことが求められています。
関連用語
<現金>
会計用語で現金とは、通貨の残高(一般的に言う現金)に加えて、送金小切手や郵便為替証書などの通貨代用証券が含まれます。
<預金>
預金とは金融機関に預けているお金のことを指します。会計用語で預金とは当座預金、普通預金、通知預金などを含み、貸借対照表上では流動資産に分類されますが、1年を超える満期日が設定されている定期預金などは、投資その他の資産の長期性預金として表示されます。
<有価証券>
有価証券とは債券や株券、投資信託など、財産的価値のある権利を表す証券や証書のことをいいます。広義には約束手形や小切手、商品券なども印紙税法上の有価証券となりますが、会計用語で有価証券といえば、通常、金融証券取引法で規定されている、株式、債券、投資信託、貸付信託などの受益証券のことを指します。有価証件は保有期間や保有目的によって勘定科目や貸借対照表上の分類が異なります。以下の有価証券は“有価証券”として流動資産に分類されます。
・売買目的有価証券
・1年以内に償還される公社債
・証券投資信託受益債権
・MMF、MRFなど
一方、以下のような有価証券はそれぞれの保有目的よって勘定科目が異なり、固定資産に分類されます
・満期保有目的の債券 → “投資有価証券”
・子会社株式および関連会社株式 → “関係会社株式”
・その他の有価証券 → “投資有価証券”
キャッシュポジションに有価証券を含める場合は、前者の“有価証券”が対象となります。
<流動性>
流動性という言葉自体の意味は気体や液体などのように流れうごく性質のことを言いますが、経済学において“流動性”とは、資産交換の容易さを表す言葉です。
例えば、貨幣は商品に交換するのは容易ですが、食品を他の商品に交換するのは貨幣ほど容易ではありません。このように、他の資産への交換(流動)の容易さを流動性と呼び、現金・当座預金などがあげられます。 また、定期預金・債券・株式なども流動性が高いものと言えます。貨幣そのものを流動性と呼ぶ場合もあり、中央銀行が金融機関に資金を提供することを「流動性を供給する」と言います。キャッシュポジションのことを手元流動性と呼ぶ場合もあります。また、必要な資金の確保ができず、資金繰りに窮したり、高い金利での資金調達を余儀なくされて損失を被ったりするリスクのことを流動性リスクといい、特に金融機関においては重要度の高いリスクのひとつとなっています。