売掛金の回収
売掛金の回収とは?
企業間の取引では商品やサービスを販売した際、現金販売ではなく、代金をあとから支払う信用取引(いわゆる掛売り)が一般的に行われています。このとき、将来的に金銭を受け取る権利を売掛金と言い、顧客から代金が支払われたこと、もしくは顧客に代金の支払いを促すために企業がとるアクションのことを“売掛金の回収”と言います。
売掛金の回収が滞ると、企業の資金繰りが悪化し、事業継続に必要な仕入の代金や人件費等を支払うために外部からの借入等による資金調達が必要になる場合があります。また、売掛金管理に問題がある企業と認識され、対外的な信用を損なう可能性もあります。企業の販売部門はまず売上を第一目標に営業活動を行いますが、売上の計上は同時に売掛金の回収リスクが発生することを意味し、売掛金の回収が終わるまでを営業責任として、販売部門や営業担当者の評価対象としている企業は少なくありません。
売掛金の回収にはどんな手順がありますか?
売掛金の回収には、大きくは以下の3つのステップがあります。
・請求書の発行
・銀行入金
・売掛金との相殺(入金消込)
請求書の発行は、顧客と検収払いの契約をしている場合は不要です。また、支払方法を銀行振込ではなく手形払いとしている場合は、手形を受領するために顧客を訪問する必要があります。しかし、すべての取引が支払期日に請求した金額通りに支払われるとは限らないため、顧客の代金支払いの遅延や金額の相違などに対処する必要があります。
<支払いを遅延させないための手続きの例>
・受注前
相手の経営状況や他社との取引状況(評判など)を確認し、与信枠や支払条件(支払サイトや支払方法)を決定し、明示する
・販売後のウォッチ
売掛金年齢表などを使い、売掛金の支払い状況を定期的に確認する
受注前と同様、取引先の経営状況を定期的に確認する
<支払い額に相違がある場合の手続きの例>
・営業担当に問合せをし、請求書の内容や社内手続きに問題がないか確認する
・社内手続きに問題がない場合は、顧客に問合せ等を行い、差異の原因を明らかにする
・差異理由に応じた処置を講じる
<支払いの遅延や不払いがある場合の手続きの例>
・顧客に連絡し、支払を促す
・顧客が支払いに応じない場合は、以下のような処置をとる
・同一顧客への他の取引の出荷を止める
・同一顧客と仕入取引がある場合は、仕入債務と相殺を検討する
・法的手段による回収を試みる
売掛金の回収は企業の資金繰りに大きな影響を与える業務であり、売掛金の回収リスクを抑えることは極めて重要です。そのために、営業部門と経理部門が連携して与信管理を徹底し、日頃からの請求管理を怠らないことが大切です。
FAQ(よくある質問)
企業は、売掛金回収をどんな方法で評価するのですか?
売掛金の回収状況や回収効率を表す指標として、売掛金回転率や売掛金回転日数、売掛金滞留日数などがあります。
・売掛金回転率
売掛金回転率は、売掛金残高に占める売上高の割合を測定するもので、回転率が高いほど、売掛金が効率的に回収されていることを意味します。月によって売上高にばらつきがある事業の場合は、平均売掛金残高を使用します。
売掛金回転率 = 年間売上高 ÷ 売掛金残高
・売掛金回転日数
売掛金回転日数は売掛金を何日で回収できるかを示す指標で、回転日数が少ないほど、売掛金を早く回収できていることを意味します。回転率と同様、月によって売上高にばらつきがある事業の場合は、平均売掛金残高を使用します。
売掛金回転日数 = 売掛金残高 ÷(年間売上高 ÷ 365日)
・売掛金滞留日数
売掛金滞留日数とは、売掛金の残高を売上日や入金期限日を基準にして、どれくらい月日が経過しているかを表す指標です。下図のような売掛金年齢表を使って売掛金を滞留期間別に分類することで、未入金の売掛金の回収を促し、回収のため適切な措置をとれるようにします。
売掛金以外に回収を伴う勘定科目はありますか?
売掛金と同様に回収行為を伴う勘定として以下のようなものがあります。
・貸付金:
貸付金とは、企業が取引先に対して資金繰りの援助等を目的で貸し付けた金銭債権のことを指します。似た用語に「貸出金」という言葉がありますが、こちらは金融機関が本業として顧客に貸し出した金銭債権に使われます。
・未収入金:
未収入金は固定資産や有価証券の譲渡など、本来の営業活動以外の取引によって発生する未回収の債権です。売掛金と同様に補助元帳で取引先別や案件別に管理を行います。
・受取手形:
受取手形は売掛金の回収手段のひとつであり、手形の振出日以降に設定された期日に手形の額面の現金を金融機関で受け取ることができ、銀行に手数料を支払うことで期日よりも早く現金を受け取ることも可能です。売掛金のような回収行為は伴いませんが、期日に現金化できない「不渡り」のリスクや、一般に金額が大きく換金性も極めて高いため現物管理のリスクもあり、売掛金と同様、現金化されるまでの管理プロセスが重要です。