差異分析
差異分析とは?
差異分析は、企業の計画(予算)や予測値と実績を比較し、その差異の原因を分析し、経営上の課題を見つけることを指します。差異分析では、売上や経費、利益(損失)などの損益計算書の項目や、棚卸資産の残高などの貸借対照表の項目、さらにはそれらの項目を組み合わせた利益率や回転日数など、様々な項目や指標の分析において、その金額や数量の計画値や予測値と実績値の差を明らかにします。
差異分析は、広義において前期末残高と当期末残高の差異(=増減)の分析を含むことがあります。
差異分析を実行する方法は?
差異分析の方法として以下のようなものがあります。
・単純比較
利益や売上など、単一の項目を比較する方法です。その項目に対する全体的な評価はある程度可能ですが、差異の原因を分析することはできません。
・差異を分解して比較
例えば、利益の予算と実績に一定以上の差異がある場合に売上に関連する項目による差異(販売数量による差異や販売価格による差異)とコストに関連する差異(製品やサービスの原価による差異、販売費による差異、一般管理費による差異、変動費による差異、固定費による差異など)に分解して、差異を分析します。また、地域別や顧客別、事業別などのセグメント別の分解を、上記の要素別の分解と併せて実施することで、差異がどこでどれくらい発生しているかを特定し、具体的なアクションにつなげます。
・フレームワークによる分析
これは一般的な要素別やセグメント別の分析とは異なり、事業特性に合わせて、より実態に即した差異の分析項目をフレームワークです。例えば、売上高を単に製品や顧客、地域に分解するだけではなく、新規顧客への売上と既存顧客への売上への分解や、受注率や個々の商談にかかる営業工数などを売上の増減に影響を与える項目として分析すること、営業現場でのより適切な改善活動につなげることができます。
差異分析には、どんな例があるか?
メーカーの製造原価を例にします。
・利益差異
ある企業の利益の計画値と実績の単純比較の差異。
・原価差異
利益を売上と原価に分解後の原価の計画値と実績の差異。
・加工費差異
原価を原価要素に分解した後の製造ラインでの加工費で発生した差異。
加工費はさらに 時間 x 単価に分解され、時間(能率)による差異か、価格による差異かを把握する。
・材料費差異
材料費も加工費と同様、数量 x 単価に分解され、製造ラインの仕損じ等による材料の消
費量の差異か、材料価格の変動による差異かを把握する。
輸入材料であれば為替変動による差異の可能性があり、また、設計変更等で使用する材料を変更したことによる価格の変動というケースもある。
・間接費差異
工場の事務部門の経費が増減したことによる原価の差異。
上記は原価項目について分解した例ですが、売上に着目すると以下のようになります。
・販売数量差異
販売数量における計画値と実績の差異。
・販売価格差異
販売価格における計画値と実績の差異。輸出ビジネスであれば為替変動によって差異が発生する可能性がある。
そして、事業特性によって差はありますが、販売数量を左右する社内要因として営業工数(効率)や広告宣伝費なども差異分析の対象として重要になる場合があります。
FAQ(よくある質問)
差異分析は、なぜ重要なのですか?
差異分析は、企業の計画(予算)や予測値と実績を比較し、その差異の原因を分析し、経営上の課題を見つけることを指し、企業は差異分析を通じて、事業全体の総合的な業績の把握や、精度の高い計画策定プロセスの維持、予測値や期待値の適切な検証などを行うことで、事業戦略の立案や損失の防止のためのアクションをより適切に実行することができます。
また、差異分析は会計監査における分析的手続きの要素のひとつとして、財務諸表の信頼性を高める上で重要な役割を果たしています。
差異分析を行う際の注意点は?
差異分析は重要な経営管理手法ですが、実施に際していくつか注意すべきことがあります。
・正しいデータ:
当たり前のことですが、誤ったデータを分析しても意味がありません。しかし、事業の現場から経営に情報が届くまでの間に、何人もの人の手を介し、スプレッドシートやメールによるバケツリレーが行われるなかで、数値に仲介者の意思が入り込んだり、時間がかかって情報が陳腐化してしまうことは珍しくありません。
・事業に適した項目
利益や売上といった項目は、差異分析の対象項目としてあらゆる事業に共通しますが、事業によって重要性が異なる項目もあります。以下に、いくつか例を紹介します。
<受注高/受注残高>
プラント建設など比較的金額が大きくプロジェクト期間が長いプロジェクトを生業とする企業では重要な指標ですが、スマートフォンのような消費者向けのハイテク製品やアパレルのビジネスでは、受注よりも需要を予測することが重要です。
<製造原価>
製造業で最も重要な項目のひとつですが、製品特性や自社工場での生産と委託生産の比率の違いによって、分析を行う原価の項目や時期(製品の企画や開発段階での原価か、現時点での生産ラインでの製造原価か、など)の重みづけが異なります。
<販売費>
消費者向けの商品やサービスを販売しているビジネスと、自動車部品などのようなB2Bのビジネスでは販売費の重要性が大きく異なります。
また、項目と同様、差異分析を実施する期間(サイクル)も事業特性によって大きく異なります。
・正しい計画策定プロセス
計画(予算)や見込みとの差異を比較分析する場合、比較の元となる計画データの精度も重要です。将来の数値なので精度を高めるには限界がありますが、計画値や予測値の根拠(前提条件)に妥当性がなければ、差異を分析しても、その差異の是非を評価することができませんし、適切な改善措置を講じることもできません。
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