月次決算
月次決算とは?
企業は財政状況を確定させ、経営成績を明らかにするために決算を行いますが、この作業を月単位で行うことを月次決算といいます。
年次決算や四半期決算との違いは?
年次決算は会社法や法人税法などの法律によって義務付けられており、四半期決算は上場企業に対して金融商品取引法や取引所規則によって義務付けられています。一方、月次決算は企業が経営管理に必要な情報を、より早いタイミングで把握するために実施されるものであり、法律や規則に基づいて実施されるものではありません。
決算業務は経理財務部門に大きな負担となるため、一般的に月次決算で作成されるアウトプットは、年次決算や四半期決算で作成する財務諸表や附属文書などと比べて簡略化されるケースが多いですが、月次決算で正確な集計を積み重ねておくことは四半期決算や年次決算の基礎になります。また、年次決算や四半期決算に必要な手続きを月次に一部分散させることで、年次・四半期での決算業務の負荷を減らすというメリットもあります。
月次決算の方法は?
月次決算は概ね以下の流れで行われます。
- 現金・預金の残高確認
金庫にある現金、銀行口座の残高と帳簿残高の照合を行います。 - 棚卸残高の確定
在庫などの棚卸資産の残高を評価し、確定させます。実地に棚卸しを行い、現品の残数を確認することが望ましいですが、棚卸資産管理手続きを整備することで手続きを簡略化することができます。 - 仮勘定の整理
仮受金や仮払金などの仮勘定を適正な勘定科目に振替えます - 経過勘定の計上
当月分の収益や費用で、当月に入金や未払いがないものを未収収益や未払費用として計上します。 - 減価償却費、退職給与引当などの各種引当金の計上
固定資産の減価償却費や退職給与などの期末に年額が確定する費用について見積金額の1/12を計上します。 - 売掛金・買掛金の確定
当月に期日をむかえる売掛金の未収や買掛金の未払いがないか確認します。 - 月次の決算書、業績報告書の作成
経営管理目的である月次決算において、年次決算と全く同じ手順で決算を行う必要は必ずしもありません。月次決算の目的に照らして、費用対効果や適時性の観点から、例えば連結対象の会社を絞り込むケースもありますし、棚卸資産においては陳腐化して販売見込みのない商品や長期停滞品の有無などの確認に重きを置くケースなどがあります。
FAQ(よくある質問)
月次決算はなぜ重要なのですか?
月次決算は企業が経営判断を行う上で重要かつ有用な情報を提供します。月次決算には以下のようなメリットがあります。
- 経営成績の早期把握
- 経営目標の達成に向けた進捗管理
- 将来予測(翌月や翌期、年度末などの短期サイクル)
- 四半期決算や年次決算の精度向上
- 四半期決算や年次決算の負荷軽減と早期化
月次決算を行うことで、経営者は会社の業績をタイムリーに把握することができるようになり、会社の経営方針をより迅速かつ的確に修正することが可能になります。また、年次決算や四半期決算の早期化や正確性の向上にもつながり、株主の企業に対する信頼性の向上にもつながります。
月次決算にはどれくらいの日数がかかりますか?
企業によって様々ですが、早い企業であれば翌月の3日以内、遅い企業であっても経営の意思決定のための情報提供という目的を考えると10日以内には終えることが望ましいです。
月次決算にかかる日数は、企業の規模(売上高よりもグループ会社の数)や取引の複雑性(事業特性や事業の数)、デジタルソリューションの活用状況によっても影響を受けます。ERPの導入によって取引の発生から帳簿へ仕訳入力されるまでのプロセスは効率化されますが、年次決算や四半期決算と同様、月次決算においても帳簿の数字を確定させて報告書にまとめる過程では多くの処理を手作業に依存しています。決算作業の自動化ソリューションを導入することで、決算が早期化され、手作業による抜け漏れや誤処理もなくなり、企業の経理財務部門は自信を持って決算処理を完了することができます。
月次決算ではどんな文書が作成されますか?
月次決算で作成される文書には年次決算や四半期決算のように決められたルールはありませんが、企業が経営判断に必要な資料として、一般的には以下のような資料が作成されます。
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 資金繰り表
- 売上高推移表(品目別や得意先別、地域別など)
- 部門別経費
- 部門別損益
- 売掛金残高表
- 買掛金残高表
- 在庫一覧表
また、これらの資料の一部は予算対比や前年同月比、翌月や年度末などの将来見込みなどの資料も作成されます。
月次決算にはどんな課題がありますか?
月次決算には経営の意思決定に資するスピードと正確性と粒度(詳細度)の3つの要素が求められます。ERPによって売上や仕入や在庫などの情報を入手するスピードは向上しましたが、データの正確性の検証や報告書の作成の多くはスプレッドシートやメールなどを用いた手作業に依存しており、限られた人材、限られた時間の中で、データの分析や将来予測に十分な時間をかけられないというのが実情です。
一貫性のある正確な決算が、経営状態が良好な企業の基本的な条件であることは、年次決算や四半期だけでなく、月次決算にも当てはまります。また、現状分析や将来予測などのより付加価値の高いアウトプットは月次決算にこそ求められています。経理財務部門のリソースをデータのチェックや集計、訂正などの“作業”から解放し、より付加価値の高い業務にシフトさせるための経理業務の変革が月次決算においても必要であり、従来の延長線上ではない思い切ったデジタルソリューションの活用が求められています。