前払費用
前払費用とは?
前払費用とは、継続的にサービスの提供を受ける契約において、将来に受けるサービスも含めて事前に一括して支払われる費用です。保険料や設備の家賃などの繰り返し発生する経費で、数カ月分あるいは1年分を一括で支払う場合に前払費用を計上します。事前に一括して支払うことで割引を受けられるような契約では、多くの場合、企業はこの方法で費用を前払いします。
企業会計原則において前払費用は以下のように定義されています。
「前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。」
また、前払費用には流動資産として計上されるものと、長期前払費用として固定資産(あるいは非流動資産)に計上されるものがあり、例えば、3年契約の自動車保険などの場合、サービスの提供が決算期から1年を超える部分の保険料は長期前払費用に該当します。
前払費用を記録する方法は?
前払費用の会計処理には、いくつかの手順があります。
まず支払時には全額が前払費用として資産計上されます。続いて、決算時に当期分の費用を資産から該当する費用勘定(保険契約であれば保険料、事務所の賃貸契約であれば賃貸料など)に振替えます。月次決算を実施している企業であれば、当期分の費用を月割りで計上します。
翌期には前払費用の残額を費用計上し、サービスの提供が終了したときに前払費用はゼロになります。
長期前払費用の場合は、決算時に流動資産に該当する部分(前払費用もしくは短期前払費用)と長期前払費用を区分する必要があり、例えば12月決算の会社が契約期間3年・保険料18万円で9月補償開始の自動車保険を契約した場合、決算時の会計処理は以下のようになります。
- 当期分の保険料として 20,000円(= 180,000/36 x 4) を費用計上
- 決算期から1年以内のサービスに該当する金額 60,000円 を前払費用として計上
- 残額の100,000円を長期前払費用として計上
FAQ(よくある質問)
前払費用の例には、どんなものがありますか?
一般的な例として家賃があります。例えば契約期間1年で月々の賃借料が100,000円の事務所フロアの賃貸契約において、家賃1年分を前払する場合は以下のような会計処理が行われます。
- 支払時 前払費用 1,200,000/ 現預金 1,200,000
- 月次決算 フロア賃借料 100,000/ 前払費用 1,100,000
資産計上された前払費用は、毎月100,000円が取り崩され(費用に振替えられ)、12カ月が過ぎた時点で残高がゼロになります。保険料の事前の一括払いなども前払費用に該当しますが、一定の契約に従って継続的にサービスを受ける場合に、まだサービスを受けていない部分に対しての支払う費用が前払費用として扱われます。サービスの提供が翌期以降となる事前の支払でも、継続性がないものは前払費用には分類されません。例えば、ホテルを予約した際の予約金などは、サービスの提供に継続性はないため、前払費用ではなく前払金として処理されます。
前払費用のメリットは何ですか?
企業はいくつかの理由から費用を前払いします。製品・サービスによっては前払いすると割引が受けられるため、事前に払うことで費用の総額を抑えることができます。また、外貨建ての前払費用は決算時の費用振替も支出時のレートで行うため、為替レートを固定化することができます。
また、前払費用は要件を満たせば当期に費用処理できるため、当期の税額を抑えたい場合には一時的な節税効果も期待できますが、一括での前払いは、短期的にはキャッシュが大きく減少するというデメリットもあります。
前払費用の償却とは何ですか?
企業は、前払費用の毎月の費用への振替額を計算します。設備や機械の取得費用を取得時には資産計上し、一定期間に按分して費用処理する減価償却と同様の会計処理であるため、前払費用の毎月の費用振替においても償却という言葉を使用することがあります。前払費用における毎月の償却額は、前払の総額÷サービスの提供を受ける月数という計算式で表されます。
なぜ前払費用の会計処理が必要なのですか?
前払費用を正しく会計処理することは、正確な財務諸表を作成する上で重要です。月次決算において前払費用の費用振替を実施することで、経営者は経営成績を、より正確にタイムリーに把握することができます。また、税務の観点からも前払費用を正しく処理することが求められます。
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