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財務・会計用語集

財務分析

財務分析とは?

財務分析とは、財務諸表という客観性を有しかつ信頼性の高いデータに基づいて、会社の収益性・安全性・生産性・成長性など、企業の経営状況を様々な視点を分析することで、経営における問題点を把握し、経営戦略の意思決定につなげます。財務分析は与信管理などで取引先を評価する際にも用いられ、投資家が投資判断をする上でもっとも基本的かつ重要な分析手法です。

財務分析と似たような言葉として“経営分析”がありますが、一般的に、財務分析と比較して経営分析の方が分析の幅が広いとされています。経営分析のうち特に「財務諸表の数字」のみを用いる分析を財務分析という考え方もありますが、経営分析においても財務諸表はもっとも重要なデータソースであり、経営分析=財務分析と表現されることもあります。

財務分析を行う方法は?

財務分析はその目的によって大きくは以下の4つに分類されます。

1)収益性分析
 収益性とは会社が稼ぐ力を計る指標で、損益計算書の「売上高」と各「利益」の比較から計算する指標が多くあります。以下に2つ例示します。

・売上高総利益率 = 売上粗利益 ÷ 売上高 x100
 売上高総利益率は売上高から売上原価を引いた粗利益が売上高に占める割合で“粗利益率”や“GP率*”とも言います。*GP=Gross Profit
 売上総利益率が高いということは、商品やサービスが高い価格でも売れている、あるいは、低い原価で提供できていることを示しており、その企業の商品やサービスの競争力の高さを表しているとも言えます。

・売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 x100
 粗利益から販売費と一般管理費を引いた営業利益が売上高に占める割合で、売上高営業利益率が高いということは、商品やサービスの競争力に加えて、販売力・販売効率の高さを表していると言えます。

2)安全性分析
 安全性分析は企業の支払能力や財務の安定性を示す指標で、次のようなものがあります。

・流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 x100
 現預金と1年以内に現金化される資産を表す流動資産と、1年以内に支払う現預金の額を表す流動負債の比率が流動比率で、流動比率が高い(流動資産の割合が高い)ほど、財務的な安全性が高いと判断できます。

・自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 x 100
 自己資本比率は、総資産に対する自己資本の比率を表す指標です。会社の資金の調達先が自己資本であるか、他人資本(銀行からの融資など)であるかをチェックでき、自己資本比率が低い企業は、経営が不安定だと判断されます。

3)生産性分析
 生産性分析は、従業員や設備など、企業が経営資源を効率良く活用しているかどうか、どれだけ売上や付加価値の創出につながっているかを分析する手法で、代表的なものとして労働生産性があります。

・労働生産性 = 付加価値額(経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課)÷従業員数 x100
労働生産性は、従業員1人当たりが生み出す成果を計る指標です。ここで言う「付加価値」とは「労働による対価」のことで、業界や会社によって算出方法は異なり、上記計算式はその一例となります。その他の生産性分析の指標としては、有形固定資産回転率、労働装備率、売上高付加価値率、総資本回転率などがあります。

4)成長性分析
 成長性分析とは、会社の売り上げや利益がどのように推移しているか、成長の可能性はあるか(成長のための投資をしているか)を分析する手法で、前者の指標として増収率や増益率があり、後者の指標として売上高研究開発比率などがあります。

・増収率 =(当期売上高-前期売上高)÷ 前期売上高 x 100
・増益率 =(当期経常利益-前期経常利益)÷ 前期経常利益 x100
・売上高研究開発比率 = 研究開発費 ÷ 売上高 x100

5)活動性分析
企業が資産(資本)をどれほど効率的に活用して売上高や利益といったアウトプットを上げることができているかを分析するもので、効率性分析と言う場合もあり、資産を有効に活用して多くの売上や利益を上げている企業は活動性が高い企業と言え、次のような指標があります。

・総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本 x100
 総資本回転率とは、会社の全ての資本(総資本)を活用し、どれくらい有効に売上を上げているか把握するための指標で、効率的に資本を活用していると回転率は高くなります。

・固定資産回転率 = 売上高 ÷ 固定資産 x100
 固定資産回転率は、企業が保有する固定資産をどれくらい有効に活用しているかを表す指標で、回転率が高いほど固定資産を効率的に活用して売上を上げている企業と言えます。

FAQ(よくある質問)

財務分析を行う上でのポイントや注意点は何ですか?

財務分析には様々な指標がありますが、評価ポイントは以下の3つです。

・絶対値
 数字自体の良し悪し、例えば利益が赤字か黒字か、キャッシュコンバージョンサイクルがプラスかマイナスか、など数字そのものを見ます。
・比較
 同業他社との比較。業種業態によって分析指標の標準値に違いがあるので、業界の平均値やベンチマーク企業との比較を行います。
・時系列推移
 同一の指標を時間の経過とともに並べて、傾向を見ます。

企業の成長段階や経営戦略に合った分析も重要です。ベンチャー企業では、収益性や安全性よりも成長性を重視するケースが少なくありませんが、大企業の場合には収益性や安全性は非常に重要となります。

また、経営の意思決定には財務分析だけでは十分ではないことを認識しておくことも重要です。財務分析は財務諸表を分析の対象としていますが、経営の意思決定において重要なデータは財務諸表以外にもあります。どんなデータが重要かは業種によって異なります。

例えば、エンジニアリング業界ではプロジェクトの受注高(受注残)が重要ですし、小売業では店舗やネットでの商品別の販売動向が重視されますし、スピード(情報の鮮度)も重要です。変わったところでは、石油の採掘会社では権益を保有しているエリアや油井の埋蔵量が重視されます。

また、近年、人的資本や知的資本などの財務諸表では測ることができない価値(見えない価値)も企業を評価する上で非常に重要視されており、こうした財務分析では可視化できない領域の分析もあわせて実施する必要があります。

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